アイドルユニット『鬼っ娘』
翌日。
紅蓮城の前に、特設ステージが出来上がっていた。
神が用意してくれた二人のレオンの分身が役に立ったのだ。
ノースアメリアの音楽祭。
巨大な野外ステージと観客用の椅子の準備に取りかかっていた。
レオンが二人いれば、血族達の動きも活発になる。
命令をするのが二人になれば、上手に分担できるからだ。
『みんな、準備してくれてありがとう。今日一日楽しんでいこう!』
レオンはテレパシーで血族のみんなに礼を言う。
テレパシーが返ってきた。
『はい! 我等が邪王様!! 御身がために、身を粉にして尽くします!!』
皆を代表してテレパシーを返してきたのは、鬼女だった。
他のみんなも同じ思いだと、テレパシーで感じ取ることができる。
この日のために、演奏者達は準備してきた。
無事に終日を迎えられることを祈るばかりだ。
みんなの頑張りは、この邪王レオンが認めている。
十時頃から観客の出入りがある。
それまでは楽屋でみんなの様子を見て回る。
巨大な野外ステージの音楽祭、絶対に成功させたい。
「調子どうー?」
レオンはまず、アイドルユニット鬼っ娘の楽屋を訪れた。
鬼っ娘達はみんな、ピンク色のウィッグを被り、ピンク色の短めの甘ロリ服を着ている。
ポニーテールで胸が大きいのが鬼子で、ツインテールで胸が普通ぐらいのが鬼娘で、ボブで胸が小さいのが鬼豆だ。
みんな衣装がよく似合っている。
レオンが突然やって来たので、目を丸くして、みんな立ち上がった。
この国の王であり、親であるレオンは絶対の存在。
畏縮する者もいるのだ。
「は、はいっ! お父様!! ご機嫌麗しゅうですわ! いつも可憐で、素敵で――」
声を上げたのは鬼子だった。
「ああ、ごめん。ノックし忘れちゃった。心の準備ができてなかったね」
レオンは後頭部を押さえて、苦笑いをした。
怒るときは怖いが、普段のレオンは温厚。
常に気を遣っているような優男だ。
「いえいえ、滅相もございませんですー」
手も顔もぶんぶんと振り回す、鬼っ娘メンバーの一人、鬼豆。
「差し入れを持って来たんだ。受け取ってくれる?」
レオンはそう言って、空間を歪ませて、オレンジのスプレー薔薇を三つ取り出した。
「わあ……! ありがと、父様! アタシ、薔薇をもらったのなんて、初めてだわ!」
「嬉しいですー! ありがとうございますー! 父上」
「髪飾りにもできますわ。ありがとうございますの、お父様。それはそうと、薔薇と言いますと……」
「うん、髪飾りにと思って。食べ物の方が良かったかな?」
頬をぽりぽりとかくレオン。
女性は花で喜んでくれる。
華やかな女性に相応しいのが花だ。
「食べ物だとお腹出ちゃうので、申し訳なくお断りしていたかもですー」
「ワタシもですわ」
「太るのは、アイドルにとって死活問題だわ! 良かった、父様が気を遣ってくれて」
「そう……。良かった、食べ物にしなくて」
「でも活動が終わったら、お菓子食べたいですー!」
「アタシも!」
「ワタシは遠慮しますの」
「わかった、用意しておくよ」




