ゼラニウムの花言葉
職員室の大型モニターに各教室の様子が映し出されている。
順調に勝者と敗者が決まっていく。
しりとりはシンプルなゲームゆえに、同じ語で終わることも多く、抽斗の数を要求される。
実は結構頭を使うゲームなのだ。
レオンは、しりとりぐらいは知っていた。
大昔、前世の頃、鬼族のみんなで遊んだことがある。
そのときは決着が着かず、引き分けだったが。
他には、鬼だからこその鬼ごっこもやっていた。
最初に見つかるのは、いつも雪鬼だった。
最早隠れる気がない。
周囲を雪に変えていた。
見つけたときは大いに喜んでいた。
『雪鬼、みーっけ』
『おやまあ、見つかってしまいましたか』
こんなやり取りをしていた。
嫌なことばかりだったとは、言い難いかもしれない。
遊んでいるときは、確かに胸の奥がじんとしていたから。
「鬼部長として、勝者全員とゲームしろ」
「なんで僕がそんな面倒な役を」
「負けたんだから、大人しく言うことを聞いておけ」
「負けてないって! あれは神王の負けでしょうが!」
「やかましい。神王、邪王を縛るぞ」
「ちょっと!?」
二人でレオンを羽交い締めにして、身動きを取れなくさせられた。
しかし、レオンはムカついたので、【操法】で二人を跪かせた。
十トンくらいの負荷がかかっている。
二人は戦闘能力も高くてタフなので、このくらいの負荷をかけてもいいかとレオンは考えた。
ぎりぎりのところで二人は耐えている。
「邪王! 貴様、何をする、オレの計画が……!」
「うわ、太ももの上にゾウが乗っているような感覚だ。重い……!」
「ふふん。どう、見下ろされる気分は」
「「最悪だ」」
というわけで、レオンが勝者達と相手をすることはなくなった。
勝者には褒美をあげたいと魔王が言い出したので、何をあげるか三人で考えた。
尚も跪いたままである。
皆に見られると、笑われるのではないだろうか。
いや、魔王を笑えるのは、同格である邪王レオンと神王ザッハくらいのものか。
魔王を怒らせると、地獄の炎で焼き尽くされるので。
レオンは喰らったことはないが、おっかないと音に聞く。
怒らせないのが吉。
三人で話し合って、褒美は花束になった。
男三人なのに、中々ロマンチックなアイディアだと自分達を賛美した。
「じゃあ、勝った魔王にも、花束を」
レオンは空間を歪ませて、手で探り、ゼラニウムの花束を用意した。
そして魔王に持たせる。
「ああ。ありがとう」
【操法】を解いたので、魔王は立ち上がって礼を言う。
「邪王も負けたことを認めたのか」
立ち上がって、服に付着した埃を手で払う神王。
レオンはどんと突き飛ばした。
「神王の負けで、僕は負けてない」
ムスッと頬を膨らませて、機嫌を損ねるレオン。
絶対に認めないと、つーんとした態度を取る。
神王は苦笑いしている。
「相変わらず勝ち負けにこだわるな」
「オレ達もどうせならば、勝ちを拾いたいだろう」
花束を持ってご機嫌の魔王が言った。
魔王はドSだがロマンチストである。
花も愛でるような男だ。
番いができたら、口説き文句も相当レベルの高いものになると予想できる。
「そうだな。勝った者全員に花束を配りに行くか」
レオンの手を掴んで、魔王は連れ立った。
空間を歪ませ、目当てのものを捜し当てるのは、レオンにしかできないからだ。
これは邪法というレオン独自の力によって、できることである。
無限にある抽斗から目当てのものを捜し出す空間移動・接続能力。
ついでに、花をかき集めて瞬時に花束にできる加工能力もある。




