神にも等しい存在、三王
交換留学で入れ替わった【創魔界】人と地球人。
現在、この空船には、【創魔界】人の三王と地球人が十人乗っている。計十三人。
レオン達が別室で話していても、地球人は中々話には入って来ない。
彼らに関係ない話ではあるが、警戒しているのだろうか。
その心中は定かではない。
一人、明らかに人外がいるから、だろうか。
レオンは鬼だから、角があって耳が尖っている。
髪も瞳も衣服も真っ赤な鬼は、見た目通り恐ろしいものに映るのだろうか。
神王と魔王は人間のような見た目だ。見てくれだけではわからない。
地球人が何か喋ってくれなければ、何もわからない。
交換留学に行ったのは、神王の血族である。
創世時、女性がいないのに人口を増やせと【創魔神】の命令が下った。
交配できないのに、どうやって増やせと言うのか。
三王は憤ったが、答えは一つ。
その血で以て人をつくる。まるで神のように。
平天大聖牛魔王のように、神のような力を持ち、行使できるのが、創世の時代の三王だ。
初めは、レオン達は困惑していた。
が、血の一滴で血族を生み出すことができることを知り、神のような存在になった。
【創魔界】の人口を増やすための、最低限の処置だったのだろう。
神王がつくる者は、天使や聖職者。神族。正しく、神の子。
魔王がつくる者は、悪魔や魔族。正しく、魔を統べる。
邪王がつくる者は、獣や人とのハーフや妖怪。魔王がつくれないものを大体つくれる。邪族というものは存在しない。
彼らがつくる者は強大にして強力。
混沌を極めるだろう。
それを望んでいるのが、この世界をつくった【創魔神】。
単に【魔神】とも呼ぶ。
王が世界を統治するならば、神は王らを支配するのだろう。
地球人の一人の少女が声を上げに、やって来る。
段のついた茶色の髪。背中まで流れるセミロング。茶色い目の可愛らしい、和風少女だった。身長は百五十九cmくらい。臙脂色のワンピースを着ている。
どう見ても、アメリカ人には見えない。
「あの、我々は一体何をすれば良いのでしょうか」
一等客室にいた交換留学生が恐る恐る訊ねた。
「地球の歴史や母国について、詳しく教えてくれればいい」
神王が答えた。
「それは教科書を見てもらえればわかるかと……」
「それから」
魔王が口を挟む。
「我らと地球人が交配すれば、ナニが生まれると思う?」
魔王は交換留学生ではなく、レオンに訊く。
魔王ベアルトは好奇心に満ちた瞳を輝かせた。
「さあ。余は参加するつもりはないぞ」
レオンは世継ぎを残さねばならないと焦りを感じる必要はない。
他二人と違って、不老不死だから。
大統領に会うまで半信半疑だったが、なんとなくそんな感じがするのだ。
神に教えられているような気がする。
お前に死は訪れない、と。
「女を多めに寄越したのは、大統領も考えあってのことだろう。邪王、貴様の子ならば、永遠の生を謳歌できるハーフが生まれるかもしれぬぞ」
魔王がうきうきした顔でそそのかす。
「冗談はよせ」
レオンは嘲笑った。
永遠の生命が約束されているのは、邪王レオンだけである。
子まで同じように永遠に生きられるならば、邪王レオンが唯一無二の存在ではなくなる。
たった一人、この世で永遠の牢獄に閉じ込められたのが、邪王レオンなのだ。
「同意なき性交をするつもりなど毛頭ないが、成果を持ち帰ってもらわねば、交換留学にはならんよ」
神王が神妙な面持ちで言った。
「そう……ですよね。じゃあ、実験してみますか……?」
好奇心で猫も殺せる口説き文句を言ってのける、交換留学生。