魔王ブレイトの未来を紡ぐ演説
魔王の最初の授業は、自分が如何にして魔王となり得たのかを語った。
生まれたときから魔王だった。
それも成長した姿で生まれた。
今このときの姿と全く同じ姿で、衣服や靴も身に着けていた。
金髪赤目の、人の目を惹く容姿。
背が低いのが男らしくないが、それでもカッコイイと言ってくれる人もいる。
だから自分が嫌いじゃないと魔王は言う。
強大な魔力と地獄を支配する力をもらったと語り続ける。
そして同じく強大な力を持つ二人の王と並び立てるほどの権力を持った。
地獄は魔王にとって心地のいい世界ではなかったが、神に定められし法を破ることをやめた。
神罰がどれほどのものか、恐ろしかったからだそうだ。
しかし、レオンは弱った神の姿を見ているので、この世界の神はそんなに恐くはないとツッコミを入れた。
魔王は少しばかりふて腐れた。
「オレ達は創世の時代から生きている。最も古い年齢のジジイだ。知りたいことは、いくらでも教えてやる」
「【創世の三王】……とてもカッコイイです。魔王ブレイト様」
放送室に一緒に来ていた交換留学生の人間の少女が、手を組んで目をハートにしている。
【創世の三王】と呼ばれたのは、このときが初めてだった。
なので、レオンはほんの少しだけ嬉しくなる。
レオンには魔王のような二つ名はない。
自分で付けると恥ずかしいので、自然と誰かに呼ばれるのを待っていた。
二つ名ではなく、三王を引っくるめた呼び名なので、【紅き閻魔】の格好良さには劣るが、頬をかきたくなる気分だ。
「貴様は何故授業を受けていない? 交換留学生も教室に入るようと言っただろう」
「私、魔王様のファンなので」
じりじりとすり寄っていく交換留学生の少女。
魔王はたじたじとしていた。
珍しく、あの魔王がドン引きしている。
これは面白いとレオンは腹を抱えて笑った。
そして笑いすぎてこけた。
「我等魔族は神族とは相性が悪い。しかし案ずるな。【創世の三王】が仲の良き友であり、切磋琢磨し合う好敵手だ。必ずや貴様達も和解できるようになるだろう。オレ達は繋がっている。心を通わせることができれば、敵愾心もやがて失せるだろう。オレはそう信じている。そして貴様達もこの魔王を信じろ。貴様達の王は、生みの親は、貴様達の可能性を信じる」
魔王は胸に手を当てて、自信満々に言い放つ。
魔族と神族の確執。
それは生まれる前から決まっていた。
習性によるもの。
その闇を取り払うことができれば、偉業を為したと言っても過言ではない。
傍らで話を聞いていた神王がフッと微笑んだ。
「神族の長である俺も、魔族との因縁をどうにかできればと考えていた。困難な茨の道だろうが、俺も皆を説得しようと思う。魔族の子らよ、俺のことも信じてくれ」
「ついでに、僕の子達とも仲良くしてね。毎日のようにお祭り騒ぎだよ。いろんな祭りを募集しているから、良かったら手紙ちょうだいね」
「以上、鬼部長からの提案だ。みんな、乗ってやれ」
「鬼部長言うなっ! 僕はその呼び名気に入ってないんだけど!」
放送室で笑い声が響いた。
レオンと魔王の取っ組み合いが始まる。
じゃれ合っている猫みたいな光景だった。
きっと教室内でみんなも笑っていることだろう。




