邪竜イコロスの過失
【創魔界】のノースアメリアに帰還すると、おかえりなさいと書かれた看板が持ち上げられていた。
ノースアメリアはレオンの居城がある土地。
祭りも大体そこで行われる。
サウスアメリアでは農業や工業を盛んに行っている。
一般階級の種族が住む土地だ。
レオンはこめかみをとんとんと指で押し、ただいまとテレパシーを全種族に向けて送った。
皆が喜んでわたがしのような煙を上げた。
色とりどりの煙は、アメリカ仕込みのようだ。
着色料をどれだけ入れたのか、謎である。
邪竜兄弟も炎や氷を吹いて、レオンの帰還を喜んでいた。
イコロスが炎、アクロスが氷だ。
正反対な方が何かと都合がいいと思って、レオンはアクロスを水ではなく氷を吐く竜として生み出した。
「異世界って、本当にあるんですね!!」
「ちょっと夢見ていた世界だったかも……」
交換留学生達は、アメリアを眺めている。
ここから見える景色は素晴らしい。
交換留学生の皆がご満悦の体で立ち上がった。
「立つと危ないよ?」
「そうだ。船はよく事故を起こすからな。用心するに越したことはない」
「縁起じゃないこと言わないでよ魔王」
とレオンが言うと、何かがぶつかった音がした。
ぷしゅーっと船が萎んでいく。
「主様、すみませんー! お連れしようとしたら、ぶつかってしまいましたー!」
「イコロスー!!」
流石、邪竜だ。
難なく全員が無事に生還し、ノースアメリアの地に着いた。
船はボロボロになってしまったが。
「次の交換留学までには直さないと」
「本当に申し訳ない、主。うちのバカ兄者が粗相をしでかしたようで」
アクロスが代わりに謝罪する。
イコロスよりも兄っぽい。
「いいよ。わざとじゃないんだし。罰も必要ない」
レオンが手を振ると、イコロスは前足を組んで喜悦した。
「ありがとうございます、主様ー!」
ぎゅーっと抱きつかれて、頬をすりすりされるレオン。
レオンじゃなかったら、全身複雑骨折していただろう。
強い力で抱き締めすぎだ。
「主、ありがたき温情、感謝致す」
「いいって、頭下げなくて」
アクロスの頭を撫でてやる。
すると、しっぽをふりふりと動かし、上機嫌になった。
「主様、我が輩もお願いします」
期待の眼差しで見つめられるレオン。
イコロスは憎めないところがあるので、仕方なく頭をぐりぐりと撫でてやった。
イコロスもアクロス同様にしっぽをふりふりと動かす。
レオンに生み出されたイコロス達は息子のようなものだ。
母親はいないが。
怜音が小さい頃も母親はいなかった。
怜音を産んで早くに亡くなってしまったらしい。
会いたいかと問われると返答に窮する。
わからないとしか答えようがないから。
母の温もりや優しさを知らずに育ってきた。
だから外部にそのような感情を求めていたのかもしれない。
ボランティア活動に勤しんで、ありがとうという言葉を待っていたのかもしれない。
それだけが、人との繋がりだったから。




