鬼山怜音の墓
夜も更けていき、みんなが客間で就寝の準備をする。
まだ眠れない交換留学生達は、くっちゃべっていた。
「皆さん、起きてますかー?」
声を潜めて、喋る交換留学生の少女。
「いえ、寝てます」
「寝かせてください。夜更かしは、お肌に悪いんですよ」
「お墓建てましたね」
「うん」
レオンが返事をする。
庭に墓を建てた。
あそこに前世の自分が眠る。
十九年の拷問から解放された記念日。
墓にはみんなが花を供えてくれた。
あれだけ嫌だった拷問に耐え、拷問をし続けてきた。
拷問一家の長として、仕方なく。
来る日も来る日も血を浴びた。
悪徳商売人も手にかけたことがあったなあとレオンは思い返す。
正気でやると心が壊れてしまうから、心を閉ざす術を覚えた。
砕いた骨の数、斬った肉の数、吐かせた血の量、数え切れない。
自分が敵の手の内に捕らわれたこともあった。
十五歳のときだったか。
そのときは、父親が必死に身代金を用意してたっけと脳裏に焼きついた記憶が蘇る。
今はどこで何をしているのか、わからないが。
「鬼山怜音は漸く眠りに就けたんだな」
「ああ、そうだね。やっと過去の自分を解放できた。ネクロマンサーを見つけることはできなかったけど」
「見つけたら、どうするつもりだったのだ?」
「情報を吐かせるつもりだった」
拳を握って、殴ってどうにかするつもりだった。
残念ながら行方をくらませているので、無理だったが。
船の捜索も、万能ではない。
朝になると、雪鬼が起こしに来た。
怜音の世話をしていたのも彼女だったから。
昔の癖がまだ抜けないのだろう。
「おはようございます、皆様」
カーテンを開けられ、日差しが差し込む。
いい天気だ。
こんな日は日向ぼっこしながら本を読みたい。
レオンが伸びをすると、他のみんなも重い身体を起こした。
「朝食の準備ができております」
ぺこりとお辞儀をして、雪鬼は戸を閉めた。
みんなは昨日着ていた服を着替えた。
雪鬼は超速で洗濯を行っていた。
やはり雪鬼の家事能力は優秀だ。
雪鬼は拷問さえやりすぎなければ完璧なのだが。
あと、怜音への溺愛っぷりも玉に瑕である。
邪王レオンとなった今も変わらず、愛情表現の仕方が激しい。
まるで小さい頃からずっと大事にしてきたぬいぐるみみたいに扱う。
小さい頃から一緒の屋敷に住んでいたのは、言うまでもないが。
朝食は目玉焼きと白米とキャベツの千切り、そして味噌汁だった。
バランスのいい食事だ。
ふと疑問に思った交換留学生の少女が訊ねた。
「どうしてお肉がないんですか?」
雪鬼が疑問に応答した。
「若大将様がお肉を召し上がらないからです。ベジタリアンと呼ばれている類いのものですね」
「へえ……如何にも人を食べそうな鬼なのに……意外です」
じぃっと見つめられるレオン。
食べづらい。
「失礼だな。僕は人を食べないよ。人の血にも酸いも甘いもあるんだから。血も飲まなくても大丈夫だし。僕が【血鬼】と呼ばれているのは、血を吸うと強くなるからだよ。特に、体術がね。他にもいろんな理由があるけど。人体破壊もお手のもの」




