鬼山怜音の葬式を行う邪王レオン
夕飯は肉のないカレーライスだった。
真ん中に穴を開け、生卵をのせる。
生卵を溶くと、濃厚な黄身の味が広がってゆく。
赤っぽいオレンジ色の卵が一番美味しい。
「ご馳走様でした」
みんなで手を合わせて唱和する。
「カレーライス、美味しかったです」
「カレーはインドの料理でしたね」
「スパイスからつくるコツなどはあるのですか?」
交換留学生達が口々に話す。
「料理番は眼鬼が担当しています」
雪鬼が交換留学生達に説明した。
「わたしです……。特に何も考えず、思いつきでつくっています」
手を挙げて、質問に答える眼鬼。
眼鬼は一つ目の鬼で女性である。
角も一本ある。
「天才肌なんですね」
「感覚派は真似できないので凄いです」
褒めちぎられて眼鬼は縮こまる。
眼鬼は内気な性格なのだ。
「褒められるのに慣れてないから、もっと褒めてあげて」
レオンは悪戯っぽく、にひひと笑う。
眼鬼が困った表情でレオンに言った。
「わ、若様……。そんな、困ります……。わたしはそんなに褒められるほど凄いわけではないです……」
「凄いから、褒められてるんだよ」
レオンが正論を返した。
謙遜のしすぎも良くない。
素直に褒め言葉を受け取るのも大事だ。
「はい……。皆さん、ありがとうございます……」
「いえいえこちらこそ!! 美味しいご飯、ありがとうございます!」
二十時頃、葬儀屋に頼んで家族葬を超スピードで執り行った。
眠りにつく自分の顔を見つめていたら、おかしな気分になった。
これから土に還っていく。
たった十九年の短い生涯を送った自分の過去の遺体。
もう心残りはない。
一思いにやってくれと火葬を頼んだ。
焼かれて骨になった自分の元の身体。
遺骨を皆で骨壺に入れていく。
誰も何も喋らなかった。
終始シリアスに進行していった。
「自分の身体を焼いて、骨にして骨を拾う奴なんて、僕しかいないだろうね」
「そうだな。おかしな話だ」
「正式に葬式をしたわけだが、戸籍はどうするのだ?」
魔王が訊く。
「そこは権力を使って復活させる。大衆はまだ僕が死んだことを知らないだろうし、テレビやネットを使って情報操作するよ。心配要らない」
最高権力者だからこそ、言ったことが現実になる。
権力は正しく使えばいいのだ。
「生きていたことにすればいいんだ。変装とかやって」
以前より顔つきが幼くなり、身長も縮んだ今、本物の鬼山怜音だと言っても信じる者はいないだろう。
だが、覚醒したことで姿が変化したと言えば、どんな姿になっても受け入れる者はいる。
あり得ないことが起きる世界だから。
それに、総理すら欺いていたのだから、一般人が真実を知る由もない。
鬼山怜音が邪王レオンとして転生していたことを、誰も知らなかったのだ。
「記憶は曖昧だからね。〈操り師〉を呼んで、人々の記憶を書き換えさせればいい。懸賞金も取り消しになるだろうさ」
今度はもう、誰にも殺されない。
それだけの力を得たから。
だが死なぬということは、誰とも一生を添い遂げられないということだ。
力ある者の運命とも言える。




