鬼山怜音への手向けの花を
「何をされているんですか?」
「見ての通り、ステゴロだ」
「お二人共、何故そんなに真剣に……?」
「観光楽しかったんですけど、お金がなくてお土産買えませんでした。今度日本に来るときはお土産買いたいです」
レオンと魔王を尻目に、会話を繰り広げている交換留学生達。
顔が綻んでいて、すっかり満足したようだ。
外国人観光客から日本は人気なので、アメリカ人である彼らの琴線にも触れる何かがあったのだろう。
着物や寿司、侍や刀などは特に人気だ。
二人のステゴロは決着がつかずじまいだった。
「ステゴロならば、勝てると思ったのだがな」
「引き分けだったね」
「喧嘩っ早いのは、面白いことだからヨシ!」
神王がどんと構えて、ぐっと親指を立てる。
「いいんですか。周りが迷惑を被ることもありますよ」
「いいじゃないか。我々は男だ。戦こそ誉れなんだ。戦う男はカッコイイと思うだろう? 見ていて損しない。この世界にもあるじゃないか。血湧き肉躍る戦いのスポーツが。我々だけじゃない。世界が熱くて強い男を求めているんだ」
神王は腕を組んで、交換留学生達を見回した。
「日本でもそういったテレビ番組があると邪王から聞いた。そして勝った者は、名誉や賞金をもらえるのだと。我が国では開催しないが、邪王の国では開催すればいいと思っている」
「ボクシングとかね。あれも戦だね、超小規模の」
ふむふむとレオンは顎に手を当てる。
戦争だけが戦じゃない。
小さな諍い自体はなくならなくていいとレオンは感じた。
それが男の生きる道。
男として強く在りたいと願う心。
「最強の称号は、いつの時代も憧れなんだと思う」
屋敷に戻ると、雪鬼がレオンに抱きついた。
「おかえりなさいませ、若大将様」
「ただいま。早速だけど、みんなの寝床を用意してくれる?」
「かしこまりました」
雪鬼はレオンから離れて、他の鬼族達に指示を出す。
てきぱきと効率良く鬼達を動かし、すぐに寝床をつくった。
百畳のもう一つの客間に、布団一式を十三人分。
広さは充分すぎるほどだ。
「怜音様、準備が整いました」
「ありがとう、夕飯の準備もしよう」
……と、その前に簀巻きにした、過去の自分の遺体を雪鬼に見せた。
「ああ、おいたわしや……」
「火葬してくれる? 家族葬でいいから。ごく小さな葬儀を行いたい。それが、僕がここで生きていた証だ」
これ以上好き勝手に暴れさせないように、死者には手向けの花をプレゼントして欲しい。
生きているレオンからの願い事だった。
死んでいるのに、喋るし、そこそこ強いことには驚いたが。
できれば、ネクロマンサーを見つけてとっちめてやりたかったのだが、当初の目的は果たされたので、半分はよしとしよう。
宇宙人とは相性が悪いみたいなので、なるべく関わり合いにならない方がいいだろう。
「はい。鬼族みんなで弔いましょう。怜音様のご遺体を」
簀巻きにされた怜音の遺体を、軽々と持ち上げる雪鬼。
涙ながらに主の死を受け入れている様子だ。
怜音が皆に愛されていたことを知ると、ほんの少しだけレオンの心が軽くなった。
あの頃の厳しい訓練も無駄ではなかったのだと。
生まれ変わって、また同じ役目を果たすことになろうとも……。




