神王と魔王はどこから来たのか?
「では、明日までに交換留学生を集めて参りましょう。私の家でお待ちしております。それとも、私が直接怜音様のお屋敷へ伺いましょうか?」
「いいよ。僕が行く」
「かしこまりました。よろしくお願い致します」
「じゃあ、よろしくね」
「「よろしく頼む」」
神王と魔王も手を添えて総理にお願いした。
一行は総理官邸を去り、屋敷に戻ることにした。
「あの、邪王様」
交換留学生の少女が恐る恐る手を挙げる。
総理官邸に行くときに一緒に着いて来ていたが、無言だったので影が薄かった。
恐らく、最高責任者同士の会話を邪魔すべきではないと考えていたのだろう。
「何?」
「せっかくなので、観光がしたいです」
「いいよ。行って来て。僕らは船で待ってるから。一時間程度でいい?」
「「「「やったー!!」」」」
交換留学生らは、はしゃいでいる。
とてもじゃないが、百歳超えとは思えない。
百年経っても、人はそうそう代わらないものなのだなとレオンは思った。
自分もあまり変わらないので。
「なあ邪王」
「何神王」
「俺も観光したかったぞ」
「ああそう。だけど王がおいそれと観光しまくるのはどうかと思う。君の容姿は目立つからなあ」
「全身真っ赤な邪王に言われたくはないが」
「オレも我慢しているのだから、貴様も我慢しろ」
神王や魔王にとっては、地球は未知の領域。
未知なる世界に思いを馳せるのは当然のことだろう。
レオンですら、日本全国を旅行したことがない。
ずっと活動の拠点は東京だった。
だから東京を観光するメリットがあまりない。
「そんなに我慢してたんだ。僕は東京で活動していたから、なんとも言えないけどね。二人はどこからの転生者なの?」
頭の後ろで手を交差させて頭を支えるポーズを取るレオン。
何気なく訊いたつもりだったが、二人は心底驚いている。
「転生か。していたとしても、俺は記憶をまっさらにされているからな。何も覚えていないし、何も知らない。生まれたとき、既に成長した状態の、神族の王だった」
「そういう契約? 僕みたいに、前世の現し身って稀なの?」
「そうだろうな。神が生み出したオレ達みたいな存在はごく稀だ。特に、邪王は初めてのケースだと思うが」
「ふーん。転生しても、記憶がリセットされちゃうのか。なんか、損だね」
「死んだときのことを思い出したら、心が壊れるからかもしれないぞ」
「あーなるほど。それなら納得だ」
目を閉じれば、鮮明に思い出す、あのとき受けた痛みと悲しみ。
だが、あの痛苦は鬼山怜音にとっては救いだった。
レオンにとっても同じことだが、この世界で血反吐を吐く思いで生きてきた怜音には、相応しい最期だったと思う。
人間の少女を庇って、瀕死の重傷を負って失血死。
【血鬼】として覚醒していれば、きっと死ななかっただろうが。
ある意味、自殺したことになるのかとレオンは考える。
少女を庇うことがなければ、死ななかったから。
だが、守りたかった。たとえ、裏切られても。
人間を。
信じたかった。




