鬼山一族の雪鬼
「はい。宇宙人の技術で怜音様の遺体を動かしておりました」
「また宇宙人か……」
「?」
何かしら宇宙人がレオンに関わってくる。
ネクロマンシーは禁じられた外法。
本来ならば、警察に捕まるほどの重罪だ。
それを怜音が生きていると見せかけるためだけに使っている。
鬼山一族にあってはならない恥だ。
どんな事情があろうとも。
「そうまでして何を求めるの?」
「怜音様のご帰還を。私達の望みはたった一つ。どうかお戻りください。私達の主は怜音様しかおりますまい」
雪鬼は周囲を吹雪に変えた。
感情が昂ぶると周囲を吹雪かせる、彼女の悪い癖だ。
「断る。戻るつもりはないと先ほども言ったろ」
「では、何故こちらに――」
「ネクロマンシーをやめさせるためだよ。今やりたいことがあってね。それが障害になる。新しい主はあいつでいいんじゃないかな。やりたがっていたんだし」
レオンは目を閉じて、これ以上の問答を許さない姿勢を見せた。
何を言われようが無駄だ。
決意は固い。
「弟君ですか……。ですが、まだ幼く、当主としての器も怜音様には敵わないのです。私達がネクロマンサーを雇ったのは、やはり怜音様しかいないと肌で感じていたからです。外法と知りつつ、手を出してしまいました」
「「「申し訳ございません。怜音様」」」
雪鬼以外の鬼族の仲間達が、雪鬼の後ろから顔を出し、こぞって謝罪する。
反省はしている様子だった。
「もう一部の人にはバレているし、なんで警察に捕まらないんだろう。不思議だったんだよね」
「その程度のことなら、揉み消すことが可能でございます」
雪鬼はお辞儀をした。
深窓の令嬢がごとく。
「口出しして悪いのだが、鬼山怜音の今生はもっと大きな世界を統べる王だ。このような小さな島国で終わるような器ではない。こいつのことは、邪王レオン様と呼べ」
魔王が雪鬼に向かって宣言した。
雪鬼は微動だにしない。
意にも介さずといったところか。
聴く耳を持たないのだろう。
「ジャオウ……? 日本国を牛耳る鬼山家の主よりももっと凄い存在になったのですか。流石のカリスマ性です」
雪鬼は精一杯の賛美を込めてレオンを褒め称える。
心地のいいおべっかを聞きたいわけではない。
第二の生を謳歌したいのだ。
もう鬼山に囚われるのは、うんざりしていたから。
しがらみから解放されたかった。
優しすぎた怜音にとって、鬼山一家の合わない世界に巻き込まれたに過ぎない。
そうであっても、当主として最善を尽くしてきた。
皆にとって居心地の良い場所を提供できていた。
だからこそ彼らは追いすがる。
ずっと側近として付き従ってきた雪鬼の目は、節穴なんかじゃない。
ただ事実を淡々と述べているだけなのだ。
「では、ジャオウレオン様。私達をどうかお救いください。貴方様ならば、不可能ではございません。皆を呼んで来ます」
「……しつこいな」
レオンはイラッとして、舌打ちをぶちかましてしまった。
「極道らしいですよ。ジャオウレオン様」
「邪な王と書いて、邪王だよ」




