邪王レオンの里帰り(前世)
一斉に襲いかかってくる黒服達を重力で跪かせる。
「僕を誰だと思っているの?」
不敵な笑みを浮かべて、全員の武器を粉々に粉砕した。
「な……!」
「この程度で驚いてもらっちゃ、困るなあ」
紅く燃えるような後ろ髪を払い、腰に手を当ててレオンは挑戦的な笑みをこぼす。
「僕がその鬼山怜音だよ。覚醒したんだ。【血鬼】としてね」
「【血鬼】として覚醒されたと……?】
恐れ戦く総理の執事。
酷く混乱しているようだ。
「しかし鬼山怜音様は今も尚、若大将をされていらっしゃる。貴方様が本物だとすれば、あのお方は一体……」
「その偽者をどうにかしないとダメみたいだね」
「よくある定番だな。有名人を騙る偽者。騙るのがそんなに簡単なのか」
神王が苦言を呈する。
だが禁断の外法、ネクロマンシーで死体を動かしているならば、あながち偽者とは言えないかもしれない。
それは邪王レオンの元の身体ということになる。
「ネクロマンサーにお目にかかれるのか。愉しみだな」
魔王はわくわくしている。
レオンは内心舌打ちした。
自分のことじゃない他人事だから、そんな浮ついたことが言えるのだ、と。
死体を好き勝手に使われるなんて、赦せない。
死者への冒涜だ、とレオンは思った。
魔王のあまりの戦闘狂ぶりに、朝露浪漫を思い出す。
「だが本当にネクロマンサーに前世の身体を操られていた場合、どうする?」
「ぶっ飛ばして、理由を吐かせる」
拳を手の平に包み込んでゴキバキと音を鳴らす。
レオンも大概戦闘マニアであった。
類は友を呼ぶ。
総理の自宅から一旦出て、出直すことにした。
責に偽者を片付けてそいつを突き出す。
口で言っても信じてくれそうにないから。
『鬼山怜音は転生している』なんて、一般人にはわかりっこない。
行きたくはなかったが、致し方あるまい。
実家に帰るとする。
総理の自宅よりも数倍でかい極道一家の屋敷へ。
本物が帰って来た――なんて、大騒ぎするに違いない。
思い返すだけで胃が痛い。
鬼族のみんなのことは嫌いではないが、家のしきたりは嫌いなのだ。
怜音の性格が歪まなかったのは、奇跡と言えるだろう。
レオン達は船に乗り、鬼山邸へと向かう。
こうなったら、正面突破だ。
自分の家に帰るのに、いちいち許可なんて取らなくていいだろう。
引き戸を蹴破ることにした。
鬼山邸に到着した一行。
レオンは当初の予定通り、引き戸を蹴破った。
出てきたのは懐かしい面々。
鬼山怜音の側近、雪鬼。
銀髪を結い上げ、水色と白色の着物を着ている二十代ぐらいの美女だ。
鬼の角はないが、人外である。
「何奴――!? 貴方様は……!」
雪鬼は一瞬レオンを睨んだが、すぐに目の色を変えた。
「久しぶり、雪鬼」
「若大将様、お戻りになったのですね……!」
雪鬼は感動して涙ぐんでいる。
が、戻って来たわけじゃない。
「戻る気はない。けど、用があって、ここに来た」
続けて、ネクロマンシーをやっているのか? と問い質す。




