邪竜と妖精
邪竜兄弟はすぐに仲良くなった。
レオンは少し羨ましく感じる。
なんせ、前世では混血で生まれ、内部抗争も多く、純血の弟には嫌われていたから。
愛なんて知らない。
だから慈善活動をすることで、他者からの愛を求めていたのかもしれない。
『ありがとう』という言葉は愛だ。
愛が籠もっていたから、自分も人間に愛を与えようと思った。
愛されなかったからこそ辿り着いた一つの真実。
他者に愛を与えることで、罪深い一族の血から逃れるように生きた。
けれども、死んだ。
愛していたはずの人間に裏切られて、罠にかかって。
愛されたかったのだろう。
善行を積んで一人の男として誰からも尊敬されるような、強く優しい男になりたかったのだろう。
この『男』という名にふさわしい自分自身を想像していたのだろう。
強くなりたい、強く在りたい、そう願ったのは、弱かったからだ。
臆病で無力な自分を忌み嫌っていたからだ。
【血鬼】として覚醒できなかった前世の怜音は、今よりもっと弱かった。
刀を振るい、戦っていた。
いつも持ち歩く鬼山怜音の銘を入れた太刀と脇差の鬼山丸。
その二振りの刀は死ぬとき一緒だった。
今は違う。
得物を持たなくても、命令すれば意のままに重力を操れる。
刀は常備しているが、殆ど使用する機会がない。
世界の法則をいとも容易く書き換えられる。
自分の血の力がこんなにも強くなるなんて、予想だにしなかった。
願望が成就した。
だから自分を変えてくれた【創魔神】ヨウゲツに恩返しがしたい。
世界を変える。
そのためならば、精一杯頑張れる。
「今度は、妖精に会いたい?」
邪竜イコロスはレオンに妖精を所望した。
イコロスは執務室に入り浸っている。
「主様がお会いしていたような……あんな感じです」
「兄者、主を困らせてはいけない」
「べつに困ってはいないけど。血ぐらい、生きていればすぐどうにかなるし。それに、僕は不老不死だから気にしなくていいけど。なんで会いたいの?」
レオンは頬杖をついて問うた。
「妖精さんとお話するのが夢だったのです」
「それはまた、随分と可愛らしい夢だね。いいよ、会わせてあげる」
レオンは指を噛んで血を三滴ほど垂らした。
青、黄、赤の妖精が生まれた。
いずれもメスだ。
「主様、ありがとうございます」
「主、兄者の願い事を聞き届けてくださった、深く感謝致す」
光の三原色が飛び交い、綺麗な色を見せる。
イコロスとアクロスは感心していた。
「本当にありがとうございます、主様」
「主、お手間を取らせた。私も嬉しく思う」
深々と頭を下げ、邪竜兄弟は笑顔を見せた。
「いいよ。僕って愛されてるなって、今思った」
何かをする度に礼を言われ、お祝いをされ、身体の心配までされている。
前世で享受できなかった愛を今、存分に受けているようだ。
誰も裏切りそうにない。
ヤルダバオートだけは例外だが。
イコロスとアクロスは、妖精達と少し疲れるまで遊んで話をした。
見た感じ、完全にお手玉みたいだった。




