邪竜イコロスと邪竜アクロス
レオンはイコロスの背に乗って、ノースアメリアの紅蓮城の近くに帰還した。
ここから見える景色。
射的で対決している神王と魔王。
わたがしや焼きそばを食べ歩いている交換留学生達。
皆の笑顔がそこにはあった。
(守りたい、この笑顔を)
レオンはふっと笑う。
たとえ未来がどんなことになっても、今この瞬間を胸に刻みたいと願った。
「ただいま、みんなー!!」
レオンは両手を振る。
すると、皆が空を見上げて手を振り返した。
帰る場所なら、ここにある。
「「おかえり、邪王」」
神王と魔王がハモった。
射的をしていた手を止めて。
三王の絆は誰にも侵せないはずだ。
未来永劫分かたれることのない友情を育んできた。
イコロスから飛び降りて、レオンは華麗に着地する。
「おかえりなさい、邪王様」
「貴方の国が出迎えますよ」
交換留学生達も嬉しそうに出迎えてくれた。
「早速話があるんだけど……晩ご飯が終わってからでいいかな」
神書を作って広める、それが神との約束だ。
ついでにレオンは学校もつくろうと思っている。
交換留学生がこれからどんどん来るだろうから。
夜も更けて、アメリアの開国祭は平穏無事に終わった。
そして翌日からレオンは本を発行する印刷所をつくった。
執務室で忙しくしていると、邪竜イコロスが部屋の窓をコンコンと叩いた。
レオンは返事をする。
「主様、お願いがあります」
中に入れてやると、イコロスは深々とお辞儀をした。
「何? できることなら」
「兄弟が欲しいです」
「兄弟……ねぇ」
レオンは渋い顔をした。
兄弟と聞いて良い思い出がなかったものだから。
前世の怜音は弟との仲が最悪。
微笑ましい会話の代わりに、刀で打ち合っていたほど。
いつも怜音が勝つものだから、弟からの憎しみは凄まじいものだった。
「いいんだけど、住処が限られるよ。成竜は身体が大きいから。同じ場所に何頭も留まらせておけない。今の場所はイコロス一頭しか無理だ」
「構いません。ひとりは寂しいので、たとえ住処が違っても、同じ種族がいると思えるだけで幸せです」
イコロスの悲痛な思いがひしひしと伝わってきた。
そうだな、確かに一人は寂しいとレオンはイコロスの言葉に同調した。
レオンは指を噛んで、窓の外に血を一滴垂らした。
すると、一頭の邪竜が顕現した。
「主、生んでいただき、ありがたき幸せ」
窓の外で礼を言う新しい血族。
武士のように誇り高い印象だ。
「名前はアクロス。お兄ちゃんと仲良くね」
レオンは名前を付けてやり、白い歯をこぼした。




