聖なる森に現れた二柱の神
「行って来るよ、僕一人で」
レオンは二人に向き直って、笑顔を浮かべる。
「邪王……」
魔王が心配そうにレオンを呼ぶ。
差出人もわからない手紙。
もしレオンに何かあったとき、力になれないのが悔しいのだろう。
傍で戦えないことが、心残りなのかもしれない。
「大丈夫。何かあっても返り討ちにするから」
にっとウインクして、レオンは魔王を安心させようとする。
「そうだな。お前は最強だからな」
魔王はフッと笑うと、拳を突き出した。
レオンはそれに応える。
コツンと拳を合わせて、レオンは手を振った。
「僕がいない間、アメリアを頼んだよ、魔王」
「承知した」
レオンは指笛を吹いて、邪竜イコロスを召喚した。
何もないときは、イコロスは地獄界に移動している。
イコロス曰く、火を噴くのにちょうど良い場所らしい。
背中にまたがって、神聖アルカディア帝国の聖なる森に向かえとレオンは命令した。
イコロスがその場で羽をバサバサと上下させるので、突風が起きた。
血族達が驚愕している。
「ああ、みんなビックリしてる」
「申し訳ございません。主様」
イコロスはレオンの【操法】で上空に上昇していく。
重力を操ってイコロスと自分の体重をゼロkgにしたのだ。
みんなが豆粒サイズになるまで空に昇っていき、元の重力に戻す。
レオンの【操法】を使えば、空中散歩もできるのだが、人がたくさんいるところでは使わないのがレオンだ。
ゆったりと空の旅を楽しみつつ、神聖アルカディア帝国へと向かってゆく。
アルカディアの東端に位置する聖なる森を視認した。
レオンはイコロスの背を撫でて、飛び降りる。
音が鳴らぬよう、【操法】で体重をゼロkgに書き換えた。
イコロスに用が終わったら迎えに来てくれとテレパシーで伝令した。
バッサバッサと羽を動かして、彼方へと消えてゆくイコロス。
レオンはイコロスが見えなくなるまで手を振った。
そして聖なる森の方へと向き直る。
「さて、と……」
神聖な力で心を浄化されていく。
日本の神社でパワーを受け取ったときと同じように。
木々がざわめく。
すると、小さくて美しい妖精のような何かが二つ現れた。
オレンジ色の光とイエローの光に包まれている。
それらが口を開いた。
見た目より響く声で。
「よく来たな、邪王レオン」
「よく来ましたね、邪王レオン」
一方が男の声で、もう一方が女の声だった。
声色は少し低めでハスキーだ。
「君達が僕を呼んだの? 僕だけを」
「そうだ」
「そうです」
「正体は一体何? 僕は何か悪いことをした?」
「ああ、したさ。我が真の名はヨウゲツ。それが信仰されぬようになった。今は、太陽と美月と呼ばれている。本来、男神と女神の二柱が一柱であったが、分かたれてしまった」
「わたし達神は、遠い未来から来たんです」




