若返る二人の王
「これで邪王様と共に何千年も生きられるといいですね、神王様と魔王様」
メドはにこりと笑う。
「そっか……。二人に使ってもらうと何千年も寿命が延びるんだ。だけど、二人は長生きしたいと思うかな?」
長く生きることが良いことだとは限らない。
まして、自分の寂しさを紛らわせるために、他人の寿命を延ばすなんてバカげているとさえ思う。
そこに彼らの意思が入る余地はあるのだろうか。
自分のこの考えは、間違ってはいないだろうか。
「不安なんですか。邪王様は」
「……」
無言は肯定の証。
否定もしないし、表情も変わらないが、不変でいられるものなんて、どこにもないのだ。
不老不死のレオンが考えるのは、おかしいかもしれないが。
見た目の変わらないレオンにも、いつか変わってしまう部分はあるはず。
「僕は選択をまた間違えるんじゃないかと危惧している。あのときこうすれば良かったと後悔することが多々あるから。今度もまた間違えるんじゃないかと恐れているんだ」
レオンは本音を吐露した。
三王の絆は決して浅いものじゃない。
百年近く語り合った仲だ。
たとえ死しても友情が壊れることはないだろう。
だからこそ、余計な思考も生まれ出ずる。
「間違えない人なんていませんよ。人外だって。初めからなんでもできる神様じゃないんですから。いいじゃないですか。邪王様が間違えたとき、きっと二人の王様が止めてくれるはずです。おれはそう信じます」
「そっか。ありがとう。みんな健康に、楽しく暮らせるといいな」
レオンは天を仰いだ。
それが今の自分の願いであり、夢である。
一ヶ月ほどで一万台のクロノベッドをつくった。
その間、ヤルダバオートは地獄の炎で焼かれ続けていたものの、たいしたダメージを負わなかったらしい。
邪力の影響だろうか。
悲鳴も上げず、やはり化け物かと魔王は冷や汗をかいていた。
それどころか、おしおきされるのに、ハマったらしい。
もっとおしおきしてくださいと彼女は恍惚の表情で訴えた。
「厄介なものを眷属にしてしまったな、邪王」
「したくてしたわけじゃないんだけどね」
「変態に好かれる運命なのだろう、諦めろ」
と、神王が言う。
慰めにもならない。
「それより、〈時空主〉と開発したクロノベッド、試してみてよ。君達にも長生きして欲しいから」
「告白か?」
プッと笑いながら茶化す魔王。
しらけた表情で応じるレオン。
「そういう趣味は一切ないから。僕は女性が好きだから。まあ、そんなくだらない冗談が言える元気があるってことか。良かった」
レオンはニコッと微笑んだ。
魔王は最初に死ぬかもしれなかったから。
三王の中で最も死に近かった人物。
地獄界を統べる王が、死んだらどうなるかはわからないが。
新たな王に託して、永遠の眠りに就くのかもしれない。
二人はレオンに言われるがまま、渋々試してみた。
クロノベッドで二人は光に包まれ、若返った。
見た目は殆ど変わらないが、喋ると幼年のような声色で、成功したことがわかる。
二人の成功を交換留学生達は大喜びした。
レオンはクロノベッドをそれぞれに渡した。




