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血気盛んな鬼部長  作者: 社容尊悟
第0章 鬼部長誕生

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血の海で踊るヤルダバオート



 一方、その頃――。

 牢屋番がお盆に載せたミルクとパンを持って牢屋に帰ると、そこにいるはずの者がいなかった。

 もぬけの殻。

「……脱獄したか」

 チッと舌打ちして、鉄でできた牢が切り刻まれているのを目の当たりにした。

 どうやら、ヤルダバオートは数時間も我慢できない戦闘民族のようだ。

 早くこの事態を知らせるため、牢屋番はテレパシーを使って神王に呼びかけた。


『神王様、神王様。どうか、お返事を』

『なんだ、どうかしたか』

 神王が呼びかけに応えた。

『ヤルダバオートと名乗る少女が消えました。地下牢を切り刻んで。脱獄した模様です。警戒を』

『なんだと!? 行方は掴めないのか?』

『残念ながら我々の力では、宇宙人の生態は把握しきれず……。真に申し訳ございません。もう少し目をかけておくべきでした。私の失態です』

『良い。過ぎてしまったことは仕方がない。邪王に報告する。眷属のことならば、主の方がよくわかるだろう』

『はっ。お心遣い、痛み入ります』

 その場で敬礼して、牢屋番はパタパタと駆けていった。

 よく知らぬ宇宙人がこれから何をするつもりなのか――。

 もしかしたら、邪王の眷属であることをよしとして、この世界をほしいままにするのかもしれない。

 危険人物だ。



 脱獄したヤルダバオートは、聖剣を片手に城下町へと繰り出した。

 神力を持つ神族達に、果たして聖力が効くかどうか。

 ヤルダバオートは聖剣を聖力で伸ばし、長剣のサイズに変えた。

 そして大暴れ。

 道行く人々を片っ端から斬り伏せていた。

 やっていることは外道そのものである。

 だが、頭が若干痛むような気がする。

(聖力は神力にも有効……! いよいよ最強が決定しましたね)


 ニヤリと薄ら笑いを浮かべて、血の海を形成していく。

 腕や首を斬り落とし、神族達に大打撃を与える。

 血の海を舞う、残酷な戦乙女のように。

 活気に溢れんばかりだった、神聖アルカディア帝国を、一人の野蛮な少女がぶち壊す。

 平和なはずの国をおびやかす蛮族の正面からの攻撃に、神族達は耐えられない。


「野蛮な異人め……! 神王ザッハの名の下に、我に力を貸し与え給え。【神王の(ブリッツ・ディ)威光(ザッハ)】」

 強烈な光でヤルダバオートを攻撃する神族の女性。

 光線に刺しまくられ、血まみれになったものの、その口元に浮かぶのは笑み。

 漸く戦える者が現れたかと思うと同時、これから蹂躙するぞと息巻いているバーサーカーである。

「その程度で私を止めたつもりですか……?」

 最早誰も止められない。

 暴れ狂う血の制御が利かないと思ったとき、助けが現れた。


「その力は君のものじゃない」

 邪王レオンだ。

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