いざ、寿司屋へ
「武蔵さん、ご飯食べたあと、家に連れて行ってください!」
「え、う、うん。いいけど……なんで?」
(祖父に会ってみたいというのが本音だけど)
「そりゃ、日本の最高権力者がどんなものか、見てみたいと思うものです」
「ああ……親父に会いたいんだね。いいよ、レオン君とは初めて会った気がしないし、悪いやつでもなさそうだし」
「私も連れてイッテ欲しいワ」
「メリーさんも……? いいですよ」
「ねぇ、私タチ、付き合わなイ?」
「え?」
付き合おうと切り出したのは、メリーの方だったかとレオンは思った。
だが、妖と人間の恋愛は禁忌とされている。
武蔵はメリーの言葉を拒絶できなかったのだろうか。
掟を破ることには、抵抗があったはずだ。
「いや……俺は極道一家の次期当主で……それに、人間との恋愛は禁止されているから……」
武蔵は困ったように頬をぽりぽりとかきながら言った。
「ゴクドーッテ、何?」
「わかりやすく言うと、ヤクザ」
「ヤクザ……。悪い人?」
「まあ、一般には反社だと思われているだろうけど、俺の家は違う。逆に反社を潰すことを目的としている。反社狩りの鬼族。悪いやつらを徹底的に狩る。だから敵も多いよ」
武蔵はメリーに諦めるように説得する。
すると、メリーの顔がぱあっと明るくなり、綻んだ。
手を組んで、うっとりとした表情で、言葉を発する。
「まぁ……! 素敵‼ まるでアメコミヒーローじゃないの! 日本にもコミックはあったワネ。私、日本のコミックが大好き‼ 主人公が悪を倒すのナンテ、カッコイイジャナイ‼ ムサシサンハ、ヒーローね‼」
こどもみたいに、まっすぐな笑顔で迫られて、武蔵は顔を赤くしていた。
親ののろけを存分に見せつけられて、いたたまれない空気のレオン。
いつも茶化してくるタイムマシンのAIは、何も言ってこない。
「ヒーローか……。そんなこと、言われたの、産まれて初めてだなあ……」
「お次のお客様ー!」
「あ、はい。三名です」
「では、お席にご案内します」
にっこりと作り笑顔を浮かべて、奥の四名掛けのテーブルに案内してくれた店員の女性。
タッチパネルの操作などを説明したあと、そそくさと立ち去って行った。
レオンには、店員がイライラしているように見えた。
何故だろう。
失恋か何かしたのだろうか。
家族っぽく見える(実際に血縁だが)レオン達が、地雷だったのかもしれない。
「店員の女性、なんか、怒ってたように見えましたね」
「うん……。いやなことでもあったのかな」
「人生いろいろデスヨ。あの人もまだアルバイト。心が痛んでいることを隠せないトキ、アリマスヨ」
「そうですね。さ、注文どうぞ」
「では、私は早速大トロを」
「いいですねー! 大物からいきますか」
「僕はうどんとポテトと赤出汁で」




