同性愛を気持ち悪いと思ってしまうレオン
「メリーさんみたいな人間が増えることを願ってます。だけど僕も武蔵さんみたいに変装しようかなと」
「いいね! ぜひ生を謳歌するといい‼」
武蔵はレオンの背中をバンバンと叩き、賛同した。
レオンの結界のせいで、武蔵の手は腫れあがった。
デジャブだ。
アメリカの大統領のときと同じ。
武蔵は不思議がっていた。
「これは……結界?」
「ご存じなんですか?」
「うん。俺は結界を張るのが苦手だけど、得意な奴がウチにいるんだ。その感触と似てる。レオン君の結界は強固だな」
武蔵は腫れた手を見つめて、ぼやくようにぼそぼそ喋った。
「私ニわからない話しないでくださいヨ! 意地悪武蔵サン」
プンプンとメリーが可愛らしく怒り出した。
レオンにジェラシーを感じているようだ。
同性なので恋人になるような関係ではないが、アメリカではジェンダーの恋模様が多種多様で、このときの日本よりも進んでいる。
同性であっても、恋人になれたら結婚してパートナーになれたりするのだ。
怜音は男にも当然のようにモテていた。
メリーのこの反応は、この時代の日本にも少なからず同性愛者はいたということだろう。
表立ってカミングアウトしていないだけで。
気持ち悪いという否定的な言葉を浴びせられたくないからだと思う。
怜音が男に告白されたときは、はっきりと気持ち悪いので無理だと伝えた。
現代ならば差別的発言と受け取られてもおかしくないのだが、自分が対象にされていた場合は別だ。
同性で、なんとも思っていない相手から急に性的な対象として見られていたら、気持ち悪いと思うのは至極当然のことで、普通じゃない恋愛観を受け入れられないのも同じこと。
差別と言うより区別なのだ。
実際に、そっちのケがない男ならば、全く知らない男から告白されても困るだけだろう。
勇気を出して告白する根性自体は天晴だが、相手の気持ちをもう少し慮ることができれば、怜音も傷つけるような言葉を吐かなかっただろう。
ストーカーが気持ち悪いと感じる理屈と同じだ。
幸い、怜音が言葉をぶつけた相手は、拒絶されるとすぐに引き下がった。
執念深く追ってくるようなストーカーは、実力行使で排除してきた。
「あ、もうすぐ順番デスヨ」
メリーと武蔵が一番前の列が並んでいた。
レオンもすぐ追いかける。
「ホントですね。レオン君、さっきから黙り込んで、どうしたの?」
「武蔵さんは、男性に告白されたことって、あります?」
「え。レオン君はあるってこと……? どうかなあ、俺は頼りないから、男にモテたことはないなあ」
うーんと空を仰いで、武蔵は答えた。
「そうですか。メリーさんは? 女性から告白されたこと、あります?」
「ないワ。どうしてソンナコト、聞くの? レオンクンは同性愛に興味があるノ?」
「いや、興味があるのは同性愛じゃなくて、貴方がたの恋愛遍歴ですよ。その中に、同性愛もあったのかなって思って。なければない、でいいんです。ちょっと羨ましいと感じちゃったり……」
「ふーん。レオンクンって、変わってるのネ。他人の恋愛話が聞きたいだなんテ」
(他人じゃないけどね)
「ホント、レオン君は俺の親父に似てるなあ。なんでそんなに似てるんだか」
隔世遺伝ではないだろうか。




