二十二年前
目の前が虹色に輝く。
過去の分岐点を何度も素通りしていき、目的地へと辿り着いた。
自転車型タイムマシンのモニターに映し出されているのは、『二十二年前(地球時間)』だ。
要するに、鬼山怜音が産まれる前の話。
これは、もしかすると本人達の口から語られなかった、禁断の恋愛の真実がわかるかもしれない。
レオンは自転車型タイムマシンを降りて、辺りを見回した。
二十二年前の東京駅だ。
この時代も人で溢れている。
レオンは誰にも認識されていない。
魂が生まれてすらいないからか。
人が当たりそうなのに、すっと何もなかったかのように通っていく。
今の自分は誰にも認識されない霊体ということだろうか。
レオンは自分の両手を見つめて、突っ立った。
『ココハ二十二年前ノ東京駅。チョッピリレトロナ場所デス。ココデ貴方様ノ父君ト母君ハ、運命的ナ出会イヲシタノデス』
「そうなの……? っていうか、機械の君が、何故そんなことを知ってるんだよ」
『ソレハ、ワタシガ万能ノAIダカラデス。〈時空主〉メドノ力ハ、実ハ三王ニ次グ実力トイウコトデスナ。ハッハッハ』
「ホント? じゃあ、現神王の死後、跡を継ぐのはメドかもしれないってコト?」
「ソウナリマスナ。邪王レオンヨ。ハハハ」
「ちょっと君、不遜じゃない?」
『ソウプログラムサレテイルダケデス。ナハハハハ』
レオンは自転車型タイムマシンを睨む。
だが、機械なのでビクともしない。
ある意味最強かもしれないものをつくったのか、あの〈時空主〉は。
『ホラ、来マシタヨ。アレガ貴方様ノ母君デス』
「金髪、エメラルドグリーンの瞳……。確かに、昔の僕によく似ている」
その女性はキャリーケースを持ち、キョロキョロと辺りを見回していた。
忙しなく、落ち着きがない様子だ。
何か、探し物をしているような動きだった。
『母君ニハ、貴方様ノ姿、見エマスヨ。モチロン、父君ニモ』
「なんで?』
『関係スル者ニハ、見エル仕組ミニナッテイルノデス』
「ふーん……。じゃあ、霊体じゃないんだ。変な感じだね』
『ソウデスネ。話シカケテミマショウ』
「うん」
レオンは自転車型タイムマシンを押していき、鬼山怜音の母親になる、人間の女性メリーの傍へと近づいた。
「Excuse me.May I help you?」
「ダイジョウブ、私、日本語わかるカラ。アリガトウ」
「そう……ですか。何か探し物をしていませんでした?」
『名乗ラナインデスカ。邪王レオント』
「名乗るわけないじゃん。この時代に、邪王の概念はないし』
レオンが機械にしかめっ面を向けると、クスクスとメリーが笑った。
「あ、ゴメンナサイ。つい。面白いヒトね』
「そうですか……?』
『母君ニワタシノ姿ハ見エマセンヨ』
「え、マジ……?』




