客間でお食事会
交換留学生達が城内の探険を終えて、三王の元に戻って来た。
「お腹が空きました!」
手を挙げて鼻息荒く、交換留学生の女子が元気いっぱいに叫んだ。
「お城の探険面白かったです」
「壺とか絵画とか、高そうなものばかりで、触るのを躊躇しました。ですが、またとない機会なので、ちょこっと触らせてもらいました。手触りが良かったです。まるで絹みたいな手触りの壺もありました。どうやってつくったんでしょうか」
他の交換留学生達は、それぞれに感想を述べた。
感想を聞いて満足した神王は、三階の客間へみんなを案内した。
客間ではあるが、食事も楽しめるようにと配慮していた神王は、大テーブルを用意していた。
アイロン掛けされた、皺一つないテーブルクロスの敷かれた、真っ白なテーブルだ。
椅子は木製の一点物。ハンドメイドだ。
どれも超一流のもので、交換留学生達は、どぎまぎと緊張していた。
「マナーなど気にせず、好きに寛いでくれ。せっかくの食事なんだ。楽しみたまえ。俺は皆が喜ぶ顔を見るのが好きでな。ガチガチに緊張しなくていい。君達は客人なのだから、一挙手一投足に、いちいち目くじら立てたりはしない」
テーブルに肘をついて、指を絡めて顎をのせる神王。
本当に心の底から楽しそうにしている人々が好きなのが伝わってきた。
人を魅了する微笑だ。
「上座には誰が座る?」
レオンが訊くと、
「「邪王」」
神王と魔王が同時に答えた。
「何故僕?」
レオンは首を傾げる。
「今日は大変だっただろう。労ってやろうと思ってな。ヤルダバオートだが、どうする? 一週間後に釈放してやるが、そのあとのことはお前に任せる」
「その話はあとででいいよ。ご飯が不味くなる」
「それもそうだな。では、用意させよう」
神王がパチンと指を鳴らすと、執事服を着た男が三人ほどドアを開けて入って来た。
それぞれシチューの入った皿を持っている。
ドアに一番遠い席から順に、皿を音も立てずに置いていく。
執事達は所作一つ一つが、上流階級のようだった。
「失礼致します」
次に、バスケットに入ったパンをトングで掴んで差し出していく。
手掴みでシチューとともに食べてくださいという意味だ。
最後には、熱々のお手拭きを添えた。
飲み物はあとで注文という形式だ。
「交換留学生達は、酒を嗜むか?」
「いいえ。未成年ですから」
「ここでは、十代でも飲めるんだがな」
神王が不満そうに愚痴る。
「酒は適度ならば、身体に良いはずだぞ」
「いつも飲み過ぎる魔王が言ってもねえ……」
「ジュースでいいか?」
神王が交換留学生達に訊く。
「「「はい」」」
「わたしはお水で」
「私はお茶でお願いします」
他の交換留学生達も遠慮せず、自身の要望を言った。
神王と魔王は焼酎をオーダーし、レオンは梅酒を頼んだ。
ジュースを所望した交換留学生達は、オレンジジュースとアップルジュースを頼んだ。
地球と変わらないこの様子は、邪王レオンの昔話に基づく。
極道一家の長として生まれた鬼山怜音は、贅沢な暮らしができていた。
その名残である。
神王は大層『鬼山怜音の昔話』を気に入っていた。
だから、たくさん聞かせた。
良いことも、悪いことも。




