新国家をつくろう
「国をつくる、か……。僕が一国の王になるのか。日本の、極道一家の長だった頃から思っていた。トップなんてろくなもんじゃないって。僕はどちらかと言うと、補佐役とかの方が好きだ。僕の責任感なんて、そんなたいしたものじゃないよ。みんなが持ち上げすぎなんだ」
レオンは嘲るように吐き捨てた。
「だが、今度は貴様の思い通りの国をつくれるかもしれんぞ。守る力ならば、あるだろう。理想を体現できる強き力が。理想郷をオレに見せてみろ」
魔王がレオンを焚きつける。
「……アメリア」
「……ほう?」
「アメリア王国にするよ。そこまで言うなら、アルカディアに負けないくらい大国にするし。ドラゴンとか伝説級の生物を生み出しちゃうし」
神王がフ、と静かに笑った。
「つくったら、国交を結ぼう。不可侵条約だ」
「オレだけが仲間はずれのようだな」
「魔族が来たら、いよいよカオスだ」
「いっそのこと、魔王も国をつくっちゃえば? 僕に言ってきたのは、魔王でしょ。いい国つくる自信があるから、言ってきたんでしょ?」
レオンは流し目で魔王を挑発する。
「ノリでつくれるようなものでもないだろう」
魔王はハァとため息をつく。
「地獄界で裁判をするのも大変なんだ。オレは貴様らとバカをやれる。それだけで楽しい。暫くは邪王のように国を持たず、と考えていたのだがな。まあ、気も変わるか。気まぐれだろう、国の王になるのは」
魔王はレオンと神王を交互に見て、言った。
「そうだね。ほんの気まぐれだよ。だけど、トップに立つのに、生半可な気持ちじゃやっていけない。トップに立つのに相応しいのは、欲に溺れない禁欲家だと思う。みんなのために生きる覚悟がなければ、トップに相応しくない」
レオンにはその覚悟がある。
だが、レオン自身はそこまでトップに拘ってはいない。
二番手だとしても、一向に構わないのだ。
「その通りだ。何かあれば、責任を取らねばならない立場がトップだ。国民に反旗を翻されれば、処刑もやむなし。だが、邪王には関係なかったな。だからこそ、お前は王として相応しいと俺は思う」
真摯な語り口調で、神王はレオンを褒めた。
「お前ほどの器の者が、国の王にならぬなど、宝の持ち腐れに等しい」
神王は更にベタ褒めする。
褒めても何も出ないのに。
「えらく褒め倒すじゃない。何か裏があるのかな? 何も出ないよ、僕からは」
「裏なんてないさ。今現在の心境を口にしたまでだ」
「オレはたいした器ではないと?」
魔王がカマをかけた問答を神王にする。
「二人とも王の器に相応しいと思っているが。なんだ、魔王。拗ねたのか。面白い奴だな」
ハハハハと失笑する神王。
魔王ベアルトは殆ど無表情で、表情が読めない。
どんなときも言葉が素直だ。
三王は仲の良い兄弟関係のようなもの。
長男だったレオンが末っ子のようにも振る舞える関係性。
願わくは、今この時が永く永く続きますように――とレオンは心に深く思いを刻んだ。




