地獄巡りの短めの旅、終了
「人間もそうだろう。いつしか己が生まれた意味を知るときが来る。『使命』というやつだな。誰もが正しい道に進むことはできない。だが、使命を持って生まれて来たことはだけは、わかるはずだ。人類は数十億人といるが、その中で世界を変える大役を任される者もいる。常人よりも豊かな才能に恵まれた、人の神のような存在が」
神王は交換留学生達を見回して、訥々と語った。
「君達もまた、特別な一人として選ばれたんだ。地球とは違う、異界の特別な王達と出会い、世界を学ぶきっかけを手に入れた。これは誇らしげに感じていいことだと思うぞ」
と言って、微笑を浮かべる神王。
交換留学生達は、表情を明るくした。
神王の言葉に、誇りを持てたのだろうか。
「異界の特別な王達ね……。僕はそんな大層なものだとは思っていないけれども。特別な力を持っているのはそうだけど、僕自身が特別だとは思わないかな。前世と殆ど何も変わっていないし。神王はプライドが高いんだから」
レオンが鼻をふんと鳴らすと、神王は肩を竦めてみせた。
「そうか? 俺の見立てでは、お前も中々プライドの塊だと思うぞ。ははは」
レオンは無言で神王の言葉を肯定した。
そうだ、プライドの塊だ。
「立ち話ばかりもつまらんだろう。椅子を用意してやる」
指をパチンと鳴らした魔王が、ぱっと這いつくばった罪人を十数人ほど用意した。
「これは遠慮したいのだが」
神王はドン引きしている。
「罪人の椅子か。どんな気持ちで四つん這いになっているんだろう」
元々サディストの気質があったレオンは、普通に腰掛けた。
「地獄巡りの旅はこれで終わりかな。次はどうする?」
レオンがみんなに訊ねた。
「昼食を摂るか?」
神王がみんなに確認する。
「はい、お願いします」
交換留学生の男子が代表して、頭を下げた。
「ならば、アルカディアに戻らねばならんな。美味い飯をご馳走してやろう。一度も味わったことのない世界を口の中で堪能するといい」
一同は地獄界から出て、神聖アルカディア帝国の神王城に向かった。
巨大な十字架を掲げたゴシック建築の城だ。
時を告げる鐘もある。
城と言うよりは、教会に近い。
だが、堅牢な造りで、要塞のようにも見える、気高く白い城だ。
「オレは頭が痛くなる。十字架は苦手だ」
魔王に効く十字架。
「僕はなんともないけどね」
「邪王なのに本人にはなんともないと……。精力だけがダメなのか。何故だ?」
『聖力』である。
魔王は不思議がっている。
「邪王の力、邪力と相性が悪いのは、聖力だけなのだな。神力もそうだと思っていたが、なんともないようだ」
少し不服そうな顔をする神王を睨むレオン。
「騒ぎになるから、裏門から入るぞ」
「「了解」」
「「「「「わかりました」」」」」
みんなそれぞれに返事をした。
返事をせず、頷くだけの交換留学生もいる。
裏門には門番がいない。
強固な結界で守られているので、門番が不要なのだ。
柱の四隅に貼られた札が、強固な結界をつくっている。
常人が簡単に剥がせない札だ。




