サウスアメリアの農場
約二百五十頭の幼竜がアメリアを飛び交う姿は、怜音が幼い頃に読んだファンタジーの絵本のワンシーンと重なる。
絵本の作者は予言者だったのかもしれない。
遠い未来の【創魔界】で起きる、現実的な出来事を予知していたのかもしれない。
「メド、気分はどう?」
「風が気持ちいいです! ちょうど冷たくて。適温って感じです」
「そう。良かった。本格的に乗ってみたくなった?」
「はい! 邪王様に発明させると、面白いものができあがりますよね」
「面白いんだ」
「遊園地のアトラクションみたいですよ」
「遊園地、知ってるの?」
メドは一度も交換留学には行っていない。
神王か誰かから聞いた話だろうか。
「神王様が教えてくれました。遊園地はカップルがいっぱいで、お一人様には少し行き辛い場所だと」
「お、おう……。そうだね」
神王はそんな説明をしたのか。
ある意味、穿った見方だ。
前世の怜音はもちろん、遊園地になど行ったことはない。
どんな乗り物があるか、どんな人が来るのか、何も知らない。
交換留学生から遊びについても学んだのだ。
遊園地っぽいのは、そのおかげだろう。
彼らから多くのことを学んだ。
交換留学、やって良かったとレオンの身に沁みた。
「邪王様も行き辛いですね」
「なんか、神王に似てきてない? いつから僕をからかえるほど、偉くなったの」
レオンが怪訝な顔で、メドを睨めつける。
コースはノースアメリアからサウスアメリアへ。
「偉くなってませんよ。エロくなったんです」
「しょうもない駄洒落……。誰から教わったの」
「自分で考えました!」
「メド、キャラ変しようとしてない? オヤジギャグを言う、見た目幼子のお爺さんになろうとしてない?」
「キャラは濃い方が、面白いじゃないですか」
「君の原動力は、面白いかそうでないか、なんだね」
レオンも似たようなものだ。
だが駄洒落は言わない。
レオンは生真面目な性格。
冗談も通じるが、基本的に几帳面。
遊びにも真面目に取り組む、責任感の強い男だ。
だからこそ皆を楽しませることができるのかもしれない。
レオンは人のためならば、全力を出せる。
「邪王様も面白いこと、お好きでしょう? お祭り国家をつくるくらいですし」
「そうだね。嫌いじゃない」
万感の思いを胸に抱くように、レオンは地上を見た。
サウスアメリアでは、レオンのこども達が農業を中心に食物を作っている。
他にも工業などもやらせているが、一番重要なのは食糧なので農業中心なのだ。
休みは適宜取らせているが、皆働くのが好きなようで、馬車馬の如く走りっぱなし。
彼らは邪王レオンのために生きている。
だからレオンも彼らのために生きる。
彼らが心から安心して暮らせるような国家をつくるのが夢だ。
「ノースアメリアには、邪王様の城やお祭り会場。水族館や動物園などのテーマパーク。サウスアメリアには、農業を中心とした職場。こども達の家々があるのですね。あんなに楽しそうに仕事をしてもらえるなんて、いいですね」
「メドは楽しくないの?」
「義務ですから。楽しいと感じたことはありません」




