理想の女性像
そのときふと、怜音の死の直前に助けた、幼い女の子を思い出した。
あの子はあのあと、どうなったのだろう。
妙に気になった。
だが今はそんなことを考えている場合ではないと首をぶんぶんと振った。
「邪王様?」
「ん?」
メドが心配そうに、レオンの顔を覗き込んできた。
レオンの一人芝居に思うところがあったらしい。
そんなに変だったかとレオンはショックを受ける。
「いや、僕の周りって、女っ気が全くないじゃない。そろそろ女性パーティが欲しいなって」
「邪王様は女顔だと思います。だから、寄って来るのが男性ばかりなのかと」
「思っていても、聞きたくなかったなぁー!!」
レオンは目を閉じながら、大声でコンプレックスを隠すように騒いだ。
「それに、女性と言えば、朝露浪漫さんがいるじゃないですか」
「あれは変態なんだよ。女性というのは、癒やしだとか、お淑やかだとか、華があるだとか、そういうイメージの人のことなんだよ、わかる?」
レオンは力説する。
浪漫は女性の中に入れちゃいけない気がする。
あの子は美人で優秀だが、とんでもないマゾヒストである。
おしおきをご褒美だと捉える、頭のネジを一本どこかに置き忘れてきた宇宙人だ。
宇宙人は変な奴が多いのかもしれない。
生まれも育ちも、自分達とは全く違うから。
浪漫のことはいずれ掘り下げるだろうが、知りたくないこともたくさんあるかもしれない。
「邪王様、こだわりが強いですね。理想の女性像とか、あったりするんですか?」
「そりゃあるよ。女性には、男性にはないものを求めているから。可愛さとか、お淑やかさとか。古き良き大和撫子」
「邪王様は可愛い系ですよね」
メドはハハハと笑う。
「あーもー! メドって、人を怒らせる天才?」
レオンはメドの頬をつねる。
「いひゃいれふ。にゃほふしゃは」
「痛いです。邪王様って言ってるの? っていうか、メドも可愛い系じゃん。僕一人だけじゃないし。クロノベッドで若返って、可愛い、可愛いって言われてるんでしょ?」
レオンはメドの頬から手を離した。
「うう……」
涙目になったメドは、ズキズキと痛む頬をさすっている。
「邪王様って、意外と乱暴ですよね」
むすっとした顔でメドがボソッと呟く。
「ごめんね、可愛いって言われるの、嫌いなんだ」
「なるほど。地雷でしたか。すみません」
ふぅとため息を吐くメド。
レオンは一瞥してから、周りを見渡す。
「邪王様、試乗されますか?」
「うん。メドの分は僕が出しておく。ほい、二人分で三千ドン」
レオンは自分の分を払わずに試乗できるのだが、働いている者達の取り分が減るので支払った。
獣人の受付にお金を渡して、幼竜に乗る二人。
「ありがとうございます」
「どこを周りますか、邪王様」
幼竜がコースを指定してくださいと頼んできた。
レオンはメドに選ばせることにした。
メドは『えっ』と声を上げるが、咳払い一つして、アメリアを一周したいですと告げた。
「了解しましたー」
翼を羽ばたかせて、少しずつ浮遊していく幼竜。
「今日は疲れたでしょ」
「いえいえ、まだまだ元気ですー!」
「好きな食べ物は何? あとで鬼族の子に持って行かせるよ」
「トウモロコシが好きですー」
「ん。わかった」
レオンは幼竜の頭を撫でた。
気持ち良さそうに目を細める幼竜。
他の試乗客とコースが被ったり、帰りの幼竜とすれ違ったりした。




