難しいな、恋愛や結婚って
「そうだ、邪王。近々、国を改名する。試乗祭が終わったら、日を空けてくれないか?」
幼竜に乗ったまま、神王は指をパチンと鳴らした。
「わかった。明明後日だね」
「ああ。まだ林は調印式に参加できないと思うが」
「手伝ってあげればいいじゃない。国づくり」
「俺はこれでも忙しい。日々の祈りや他の子らの懺悔や願い事などを聞いてやらんといかん」
「神族は神に仕える巫みたいなものだもんね」
レオンが神王と喋っている間、メドは黙々と作業に没頭していた。
どうやら、試作品一号が完成したらしい。
「ご苦労なことだな」
神王がレオンとメドに労いの言葉をかけた。
レオンはうんと首肯して、メドはありがとうございますと返した。
メドは試作品一号を腕にはめて、座標を指定する。
そして一言呟く。
「神聖アルカディア帝国神王城前に移動せよ」
命令すると、メドの姿が忽然と消えた。
「成功したのかな……?」
レオンは少し心配だったが、〈時空主〉としてのメドの力は圧倒的だ。
何も心配することはない、と思い直した。
レオンはメドがもう一度こちらに戻って来るまで、作業をすることにした。
試作品二号の設計を考えている最中、メドが戻って来た。
「おかえり」
「ただいま戻りました。成功です。量産していきましょう」
「了解」
レオンとメドは共同作業で、次々と時計型瞬間移動装置をつくっていく。
初めての共同作業も上手くいったので、レオンとメドのコンビは相性がいいらしい。
レオンがアイディアを出し、メドがアイディアを形にする。
レオンはいつしか、ものづくりの楽しさに目覚めていた。
ものづくり教室を開講してみてもいいかもしれない。
それはまた別の日にしよう。
レオンとメドは時計型瞬間移動装置を一万個つくった。
ときは十二時過ぎを指している。
そろそろ昼飯の時間だ。
「メド。ちょっと試乗祭、覗きに行かない?」
「覗きとは。はい、休憩がてらですね」
メドは立ち上がって、作業を中断した。
レオンも同じ動作で、二人は紅蓮城を出る。
城下で行われている試乗祭は、人でごった返していた。
獣人達が主体となって受付している。
コースは自由だが、アメリアから出ることはできない。
あくまで試乗。
乗り心地や風の気持ち良さを感じてもらうための祭りだ。
「まだかな、まだかな」
「もうすぐだよ」
「ワタシ、邪王様のファンになっちゃったかもぉ!」
「キャー! ワタシもぉ!!」
キャッキャウフフと騒いでいる、微笑ましい魔族の少女達。
レオンは女性に好かれて、悪い気はしなかった。
だが、魔王のように結婚相手に、と考えると、途端にわからなくなる。
恋愛をしたこともない初心な男だ。
結婚もよくわからない、朴念仁である。
どんな相手が自分に相応しいか、自分で決めなくちゃいけないのに、この人が運命の人だというのがしっくりこない。
誰かに決めてもらえたら、楽なのに。




