ドラゴンライド試乗祭
そして夜が明けて、ドラゴンライド試乗祭が始まった。
レオンはメドと一緒に時計型瞬間移動装置の試作品を、紅蓮城の地下室でつくっている。
ドラゴンライドしに来た客は、おおよそ一億人程度。
獣人達や動物達に案内されて、幼竜に乗って大空を駆けている。
笑顔があった。心からの。
レオンが見たかったものだ。
試乗は一回千五百ドン。
レオン的には、お手頃価格である。
レオンは紅蓮城の地下室で、メドと一緒に現場中継を最新機器のモニターで見ていた。
黙々と作業に取りかかる姿をメドがじっと見つめてくる。
「邪王様って、職人みたいですよね」
「そう? 自分では、そう思ったことなんて、ないけど」
「職人魂っていうか、そういうものを感じるんです」
「あはは。メドは面白いことを言うね」
ふと外を見やると、両手を振っている魔王が、幼竜に乗って現れた。
レオンは窓を開け放ち、魔王に挨拶をした。
「おはよう、魔王」
「おはよう、邪王。試乗祭、中々いいな。乗り心地も抜群だ。予約はどうすればいい? こどもらに、本格的に乗せてやりたい」
「お、ドラゴンライド、気に入ってくれた? なら、受付の獣人に予約を頼んでくれる?」
「わかった。思いの外、好評のようだぞ」
「うん、見てたから、知ってる。もっと幼竜増やそうかな」
「そうするといい。じゃあな」
「うん。バイバイ」
「邪王様、行き当たりばったりですね」
メドが苦笑いした。
神王や林達も来ていた。
神王は一人乗りで、紅蓮城の窓までやって来た。
「忙しそうだな、邪王。おはよう」
「おはよう、神王。なんだか、わくわくした顔してるね。気に入った?」
「燃費のいい幼竜を試乗させるとは、恐れ入った。幼竜でも竜。世界一周旅行ができるんだろう?」
「うん。竜族はみんなタフだからね。万が一翼が折れても、片翼走行できるよ。みんな楽しそうで良かった」
「邪王レオンさん、貴方の言う通り、今日は一日責務を忘れることにします。色々とありがとうございます」
林が元中国人の少女と元貧民達を連れて、幼竜に乗って挨拶しに来た。
試乗料金は払えたのだろうか。
いつもツケだと、借金が膨れ上がるが。
「どういたしまして。で、試乗料、まさかツケじゃないよね?」
「はい。アルバイトがあったので、アルバイトして来ました」
「どこの国の」
「邪王さんの国です」
アメリアでお金を稼ぎ、アメリアで使うという、面白いお金遣いの荒さ。
しかし、林は満足そうな顔をしている。
幼竜に乗って、風を肌で感じるのが心地いいのだろう。
「林、と言ったか。【創魔界】はどうだ?」
神王が神妙な面持ちで、林に【創魔界】の感想を訊く。
「祖国より自由な世界ですね。国境がなくて、ここに生きている人々は皆幸せそうな顔をしています。テレビもパソコンもスマホもないのに。充実した日々の暮らしが、娯楽を必要としないのですね」
林のつくる国はまだ何も充実していないが、周囲を見渡して林は言った。
その瞳は羨望を孕んでいた。




