新たな王達の誕生
「げほ、ごほ、がほっ……!」
血を吐き散らし、地面の砂を握る林。
爪まで赤く滲む。
「もう少し、もう少しだから……」
レオンが励ましの言葉をかける。
人間から邪力を持った超人になる転換時が一番辛いとき。
この峠を越えないと、林は人間をやめられない。
この拷問のような苦しみを耐え抜いたあと、お釣りがくるぐらいのメリットを得られる。
林は胸を押さえて、のたうち回る。
邪力は人間の身体を燃やすように熱い、エネルギーだ。
林は苦悶の表情で、血涙を流している。
「視えたよ、邪力の源」
林の左の胸元が光り出した。
林の邪力生成器官は、心臓のようだ。
「おめでとう、契約成功だよ。よく頑張ったね」
「は……い……」
元気のない笑みを見せたかと思えば、そのまま気を失った。
「【主従契約】って、グロテスクなんですね」
メドが脅えた表情で呟く。
レオンはうんと答える。
「異物を取り込むんだから、最初は拒絶反応が起きて当然。だけど林君は打ち勝ったよ、邪力の拒絶反応に」
「おれも何か手伝いたかったです」
「できることはないんだよ。部外者には。だけど今ならできるよ。林君を運んであげたり、傷を治してあげたり。君なら無傷にするのは簡単だろう? メド」
レオンが不敵な笑みを浮かべると、メドは大仰に頭を振った。
「はい!」
林の傷を〈時空主〉の力で治し、メドは彼をテントの中へ運んだ。
レオンもやろうと思えばできるが、メドがやりたいと言っていたので、譲ったのだ。
林が目を覚ます前に、中国人全員に確認を取った。
人間をやめて強くなりたいか、と。
それには多大なリスクが伴うとも説明した。
全員が首を縦に振った。
なので、レオンは全員と【主従契約】をした。
結果は全員成功。
またメドが傷を治した。
「さっきまでトイレに行きたかったのに、行きたくなくなった」
一人の中国人が両手を見ながらボソッと呟く。
「身体の構造ごと変わるからね。これでもう人間じゃない。君達もこの世界で一部の力を行使できる王として、認められたんだ。僕と同じ重力操作能力とは限らない。他にもいろんな力を使えるけど、僕の【操法】は重力操作に特化しているからね。基本的に、身体強化は誰もが使える力だ。これで、この世界に相応しくなったね。歓迎するよ、君達はもう、無力さに打ちひしがれる人間じゃない。強くなった」
レオンが手を差し出すと、全員がレオンの手の上に手を乗せた。
「ありがとう」
「中国語しか喋れないと不便でしょ。アルカディア語を教える。大丈夫、もう一瞬で覚えられるから」
レオンがテレパシーで全員の脳に一冊分の本の知識を叩き込んだ。
衝撃が走ったような表情をして、瞬時に理解していく彼ら。
「今アルカディア語を使ってるんだけど、わかるよね」
「わかる……わかります。こんな簡単に学習できるなんて……」
「アルカディア語が共通語なんだ。これで交渉もしやすくなったでしょう。あ、因みに、寝ている林君にも同じことをしたよ」
「邪王様って、なんでもできるんですね」
メドが目を丸くして言った。
「そこまでではないけど、最強と呼ばれる所以はあるかな。僕には反重力も効かないし」
「なんでです?」
「僕が王の中で特別だからだよ。三王はみんな、容易に世界を滅ぼせる力を持っている。神王は謙遜するけど、あいつも凄いんだよ」




