君は僕と同格なんだから
魔王と鬼女は日帝の魔王城へと帰って行った。
レオンは執務室へ行って、イコロスをテレパシーで呼ぶ。
紅蓮城の窓にイコロスが現れた。
窓を開け放ち、レオンはイコロスの頭を撫でた。
長旅お疲れ様の意を込めて。
「主様、くすぐったいです」
「うん、くすぐっているからね。二人の旅に付き合ってくれてありがとう」
「いえいえ、お安いご用です。実はアクロスも一緒に行きたがっていました」
「ええ? そうなんだ。じゃあ世界一周旅行がしたいってことかな」
「そうかもしれません。アクロスは魔王様のことも好きなようです」
「ふーん……。そっか。イコロスは楽しかった?」
「はい。背中の方へイチャコラブチューをされました」
「なにその効果音。要するに、チューしてたんだ。やらしいね」
「そうですね」
イコロスは呵々と笑っている。
レオンもつられて笑った。
イコロスに家族が増えることを話した。
移動手段にドラゴンを使うと。
ドラゴンは空を飛ぶことが好きなので、ウィンウィンの関係なのだ。
大暴れすると、天災級のドラゴンだが、この世界では魔王の法、即ち閻魔の力を持つ者の理を蔑ろにすると、地獄に連れて行かれる。
そして壮絶な拷問や死を経験させられるのだ。
一度の審判で死刑以上の拷問刑を受けた場合、何度も転生させられては酷い目に遭う。
地獄の本当の恐ろしさを知る者は、まだ誰もいない。
同格であるレオンや神王も魔王の定めた法によって罰を受けることもあるので、一番怒らせてはいけないのが魔王だと判断している。
それが【悪の正義王】、魔王ブレイトだ。
瞬間移動装置はクロノベッド同様、メドと共同開発することにした。
メドは働くのが好きらしく、神王が連絡してすぐに快諾してくれた。
邪王の頼みを断れるような肝の据わった者は、この世界にはいないが。
地獄では魔王が一番怖いが、この世界を統括しているのはレオンだ。
だからレオンを怒らせるのも怖いのだ。
幸い、レオンは温厚篤実な性格なので、滅多なことでは怒らない。
叱ることはあっても、怒りで我を忘れるほどのことは現在のところは皆無。
神王が邪王の本気が見たいと目を輝かせて言ったところで、誰にどう怒ればいいのかわからない。
ネクロマンサーには、ほんの少し怒りを覚えたが、恨んだり憎んだりするのとは無縁。
レオン自身が逆にそういう感情をぶつけられる。
邪な感情を引き出す王だから。
レオンは誰に対しても愛情を持って接する、無償の愛の体現者だ。
だが、突き放すときは容赦なく突き放す。
それもすべては愛あってのこと。
人間に理解するのは難しいほどに愛情が深い。
神王は神聖アルカディア帝国からアルカディア王国にすると帰り際に言い出した。
「元々俺は戦争に向かない。王制にして神の言の葉を賜れるよう、日々精進する所存だ。改名のときは調印式に参列してくれ」
「わかった。僕と同じ王国にするんだね」
「ああ、皆に触れ書きを出したら、魔王と新しい国の人間の王も呼ぶつもりだ」
「林君は皇帝になると思うけど」
「凄く頭が良くて戦にも強い人間の皇帝か。俺は負けそうだな」
ははっと自嘲した神王の肘を小突くレオン。
「僕と同格なんだから、プライド捨てないでよ」




