魔王の土産
魔王と鬼女が邪竜イコロスに乗って、新婚旅行から帰って来た。
レオンは魔王を重力操作で跪かせて、新婚旅行の話を聞いた。
イコロスで【創魔界】一周旅行をしてきたそうだ。
途中、大雨と暴風に煽られ、神聖アルカディア帝国で台風が過ぎ去るのを待ったらしい。
二人の新婚旅行は波乱だったが、楽しかったと笑顔で話してくれた。
「それにしても、イコロスを勝手に使うとは」
レオンは紅蓮城の廊下で、二人を正座させた。
魔王の膝の上には、一トンほどの石を乗せている。
少しは反省してもらわないとダメだ。
魔王は自分に甘いところがあるから。
「すまない。二度目はない。ちょっと悪ふざけが過ぎたか」
「新婚旅行で浮かれる気持ちはわからなくもないけど」
「そうなのだ。気持ちが浮ついていた。土産を買ってきたので、どうか許してくれないか」
「土産話?」
「いや、海産物だ。邪王に教えられた通り、日帝では海産物の販売に重きを置いている。これで許してくれないか」
「ちょっと待って。自分の国の物を買ったの? 王である君が?」
「そうだが」
「それはなんだか、滑稽な話だ。二人で行って来たんだね」
王ならば税収と同時に農作物や海産物を納めてもらえるように、政を操作すればいいのにとレオンは思った。
王の言うことは絶対という信仰の下、無茶のない要求は国民全体に課せられる義務のはずだ。
まさか、買うとは。
魔王が自分の国で買った海産物は、もずくだった。
レオンはパッケージされた、もずくを手渡された。
これで許せということか。
「申し訳ありません、邪王様。許してください。タダ働きでもなんでもしますから」
「ううーん。鬼女がそこまで言うなら……」
自分の娘に甘いところがあるレオン。
手の平の上で転がされている気がしなくもない。
腕を組んで仁王立ちしていたが、レオンは諦めた。
「恩に着る」
「着なくていい。それより、人の家族を勝手に連れて行ったことを反省して欲しい。今回は台風も来て、お客さんをもてなすのが大変だったんだから」
レオンは魔王の膝に置いていた石を回収した。
魔王は正座を崩す。
レオンは魔王のこめかみを拳でグリグリした。
「痛い痛い」
「これくらいで済んで良かったと感謝して欲しいぐらいだよ。誘拐と一緒なんだからね? 今度イコロスに連れて行ってもらうときは、僕に許可を取ること。いいね?」
「ああ、わかった」
「よろしい」
「お騒がせしました、邪王様」
「ん」
鬼女の正座を崩させ、レオンは二人を解放した。
これからは魔王城で一緒に暮らすのか。
寂しくはなるが、二度と会えないわけではない。
たまの休みに日帝に寄って、土産を持って行こう。
孫の顔が見られる日も近いかもしれない。
自分は結婚していないのに。




