温泉旅館に行きたいな
「はい。是非ともお願いします」
外は大荒れ。
台風のように風速も七十m/秒を超えていた。
この天気の中で宿もない彼らはどうすることもできない。
なので、天気が回復するまで泊めてやることにした。
お代は身体で払ってねということで、こき使うことにした。
城内の掃除や書類整理などできそうなことをやらせた。
おかげで、普段仕事をしている鬼族達が休めている。
「たまの休みに、温泉行きたーい」
「ワタシもですわ!」
「源泉掛け流しの温泉旅館、日帝にあるらしいですー」
「「行きたーい」ですわ」
廊下を歩いていると、鬼っ娘達が温泉の話題を上げていた。
魔王からはそんな情報は手に入らなかったが、あれから随分と商業を展開しているらしい。
自分なりに国のことを考えてのことだとしたら、物凄く偉いことだ。
レオンも休みを取って、温泉旅館に行ってみようと思った。
「私も温泉行きたいです」
「オンセンって、何?」
貧民の少女が訊いてくる。
「温かい泉と書いて、温泉。外の景色を見ながら楽しめる露天風呂や足だけを浸からせる足湯などもあるよ。メジャーなのは、大浴場で大人数が入れるお風呂かな。美肌効果や疲労回復も期待できたりするんだ。通常のお風呂と違って、いろんな効果があるから、湯治にもいい」
「言っていることの半分もわからない……」
「ああ、ごめん。一度行ってみるといいよ。魔王に説明すれば、一日タダ働きで温泉旅館泊めてくれるかも。ダメそうなら、僕から口添えしとくからさ。経験してみるといいよ。いろんなことを」
「いろんなことを、経験……」
「そんなこと言われたの、産まれて初めてです」
「あとは移動手段にドラゴンを使おうと思ってるんだけど、種が増えすぎると住み処の確保がね。ほら、ドラゴンって、でっかいからさ。瞬間移動装置を開発しようと思う。パスポートなしで、いろんなところにそれ一つで行けるのって、便利でしょ」
レオンは嬉々として計画していることを語った。
人工雪装置をつくって雪祭りを開催したいだとか、海で水泳大会を開きたいだとか、貧民に話をする。
わくわくした様子で話を聞いてくれるので、レオンは調子に乗った。
「邪王、お祭り好きなのは結構だが、財政はどうなっている?」
「問題ないよ。新装置開発も上手くいく予定だし。今じゃ、君の国よりも裕福だ」
「そうか。毎日のように遊んでばかりだと思っていたが、意外と抜け目ないんだな」
「そりゃ、大金持ちの長だったんだから、ケチるときはケチるよ。大金持ちでいられたのは、節約上手だったからだよ」
「ほう。是非ともご教示願いたいな」
「僕は前世から、肉やらの高級食材は口にしなかった。ヴィーガンだったんだよ」
ヴィーガンとは菜食主義のことである。
生き物を食べないという固い意志を貫く者のこと。
だが肉類や魚類には、人間に必要な栄養素が多く含まれており、長生きしたければ、バランス良く食事を摂ることが不可欠だった。
大昔の日本人は短命で、背が低かったから。
欧米食が文化に取り入れられるようになって、平均身長や平均寿命がのび出したのだ。




