禁断の恋愛の真実を誰も知らない
林は味噌汁を飲みながら皮肉った。
目元を歪ませて。
「私は愛人の子です。愛情はそれなりに受けて育ちましたが、私は世間一般では非難される子です。金銭面でも苦労して育ちました。私は、意味のある人生だったとは思いません。虐められていましたからね。なんとか、自力で敵を倒しましたが」
「辛い人生、確かになんの意味があるのって思うよね。僕も混血で、妖怪と人間のハーフだったから、君の気持ち、少しはわかるつもりだよ。純血を長とすべきなのに、僕が長になっちゃったから、内部抗争も頻繁に起こって、毎日が地獄だった。過去の僕が生まれたのは、禁断の恋愛がきっかけなんだ。生物は変わってしまう。恋愛で。だから僕も知ろうとした。なんで妖怪と人間が恋をしたのか」
林は息を呑んだ。
レオンが元人間の血を引いていたことを知らなかったからだろう。
レオンもあまり話さない。
必要なときだけ自らの話をする。
今がその、必要なときだ。
「だけど答えは教えてくれなかったよ。父親も母親ももうとっくに死んでいるから。死人に口なしとは、よく言ったものだね。墓参りしたって、答えは自分で探すしかない。自分の中で決着を付けるべきなんじゃないかな。やってはいけないことをしてしまった彼らの気持ちを自分なりに考えて、整理してみる。僕は、恋って自分じゃどうすることもできない激情のようなものだと解釈した。今が一番大事で、そのあとのことは想像できなくなる。だからこどもなんて産まない方がいいんだけどね。そのこどもは誰の仲間にもなれず、孤独感を味わうだけだから。不幸になるって、最初から決まっているようなもの」
「邪王は、鬼山怜音は不幸だったのか」
「うん、そうだね。幸せになりたかったよ」
「今は?」
「幸せだよ。たくさんのこども達に囲まれて、頼り頼られる関係」
「それなら良かった。俺達の仲間でいられて、もだろう?」
「そーゆーこと言う?」
「仲がいいんですね」
「ホントだ。仲がいい。友がいるのは羨ましい」
貧民の少女が拙い中国語で言った。
羨ましいと言われるのは好きではないが、貧民だったから欲しいものが手に入らなかったのだろう。
どれだけ悔しい思いをしてきたか、知る由もない。
鬼山怜音は不幸だったが、持っていたものは人より多かった。
幸福を求めるなんて、ある意味贅沢だったのかもしれない。
貧民の彼らはそんなに多くを求めていなかったから。
今日食べるご飯、目の前の炊き出しを求めるように生きてきたと語った。
炊き出しや飯を恵んでくれる人はありがたかったが、いつも毎日が不安だったとも言う。
「今度の国では、全員が毎日の食事を不安がらずに摂れるといいね。幸せになって欲しい。僕らも少しだけど協力するから」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
林が頭を下げて、手を合わせた。
「こうやって城に招待して、飯をご馳走してやるだけでも助かると思うぞ。邪王は優しいからな。俺も見習おう」
「急に褒めるなんて、嵐が来そうだよ」
レオンはハハハと乾いた笑いを漏らすと、本当に嵐が来てしまった。
外は風が強く、どしゃ降りになっている。
言葉の魔法は恐ろしいとレオンは感じた。
「今日、うち泊まってく?」
お泊まり会みたいなノリで林達に訊いた。




