【創魔神】の絶大なる力
「こんなところで何してるんですかい? 神王サマがた!」
「珍しいですね」
フランクに話しかけてくる城下町の商人達。
「地球の者達に国を案内していたところだ」
「……の割に、一人の少女を取り押さえていますが、何故に?」
怪訝な顔つきで問う商人。
彼女が宇宙人だとは、彼らの与り知らぬことだ。
そして敵であるとも。
「この者を幽閉する」
「邪王には悪いが、拷問を受けさせる」
神王と魔王は宇宙人ヤルダバオートを危険視し、決定を下した。
その決定を覆すことはなかったが、一定期間の幽閉で済ませることにした。
幸い、まだ大きな罪を犯してはいないので、地獄で裁判をしなくて済む。
眷属が痛い目に遭うと、主であるレオン自身も気分が悪くなることがある。
だから、それを気遣って、レオンに悪いと魔王は言ったのだろう。
彼女の目的が何かは定かではないので、地下牢に幽閉するのが最適と二人は考えたのだ。
本当に、レオンの眷属になりたかっただけなのだろうか。
「三王に刃向かう者がいるとは、これ驚きですな。その勇気は無謀だったんですかい?」
商人が顎髭を触りながら、訊いてくる。
「無謀かどうかはわからぬ。しかし余を苦しめたのは事実だ。罰ぐらい与えてやらねばならん」
「邪王レオン様。貴方のその口調は偽りのものなんですね。本来はもっと可愛らしい喋り方の方だとは」
眷属になると、色々なことがわかるようになる。
眷属は主のために主の状態を把握しておく必要があるからだ。
一方の血を飲むだけで成立してしまう【血の盟約】、厄介な契約が成されてしまった。
こうして敵対する者に血を飲まれると、隠してきたことや色々な感情が筒抜けだ。
同様に、主も眷属のことがわかるようになる。
血の繋がりは、【血の盟約】によって濃くなる。
「……」
〈幻想師〉の力で眷属ですら謀ることもできるが、基本的に三王のような強力な王の眷属は、王の状態を知ることができる。
それが【血の盟約】。
【血鬼】であるレオンは、眷属の健康状態を、血を飲むことによって理解できる。医者要らず。
「そうだったのか。オレは普通にカッコ付けで始めたものだとばかり思っていたが」
「うるさい」
「恥ずかしがることはないぞ、邪王。男児……いや、男たるものカッコ良く在りたいものだ。そうだろう、魔王」
「神王の言う通りだ」
「普段は一人称が僕だなんて、ギャップ萌えですね」
つらつらと暴露していく、宇宙人ヤルダバオート。
からかわれるのがわかっていたので、神王や魔王には教えなかったのに。
「”俺”よりは合っていると思います」
適度にレオンをいじり出す交換留学生達。
レオンは前世の鬼山怜音の頃からいじり対象だった。
フランクで陽気なアメリカ人の血と、真面目で勤勉な日本の妖怪の血を持って生まれた、日本国籍の極道の長。
だが現在は日本国籍の極道よりももっと複雑な立ち位置にいる。
日本に縛り付けておく力が、天照大御神が、生まれたばかりの【創魔神】に負けたのだ。
それほど絶大な力を持っている【創魔神】は、三王達に仕事をさせて、勢力を拡大させている。
神々は地上や地下の物語を愉しんでいる。
自らが生み出した、否、人間達に生み出された存在ーーそれが神。
初めから存在する創造神もいるだろうが、神のその殆どが人間達の願いや思いによって、生み出されている。
レオンの願いによって、この【創魔界】で新たな神が誕生したのかもしれない。
絶大な力を誇る【創魔神】が。




