共産主義は理想か? 現実を見据える物差しか?
「そうだね。僕は幸い、血でこどもを生み出せる能力を持ったから、永遠に一人になることはないだろうけど。ずっと若く在りたいと思う女性も、素敵だと思うよ。人知れず努力しているだろうから」
レオンは努力せずして、永遠の若さを手に入れた。
世の女性が知ると、泣くだろうか。羨むだろうか。
それとも、終わりの来ない地獄を哀れんでくれるだろうか。
レオンが希ったのは、不老不死じゃなかった。
誰にも負けないくらい強くなりたい、それが本当の願い。
確かに、不老不死であれば、ずっと全盛期でいられるが。
死ぬような致命傷を負ったとしても、蘇ってずっと立っていられる。
けれど、神は自分の思うようには願いを叶えてくれない。
神にとって、レオンは都合のいい玩具なのだろう。
楽しいはずの祭りを開催しても、どこか満たされない自分がいた。
誰にも相談できなかった。
「そちらの世界のクロノベッドというものを、こちらでも使えるようにしてくれませんか。若返りを期待できるのでしょう?」
「うん。そうだけど、こっちは三次元で、あっちは五次元。次元が違うから、同じ次元まで上げないと、本来の効力は期待できない。この国に刻紋を彫ることはできるかな?」
「コクモン?」
「刻む紋。印のこと。大きな円とこちらの世界の言語を刻みつける。首都がいいかな。こっちで【操法】を使うときに、その刻紋があると便利なんだ。地球と【創魔界】をリンクさせる」
「何やら難しい話ですが……その刻紋とやらを彫ればいいのですね。クロノベッドのお値段はいくらです?」
「ざっとこのくらいかな」
レオンは人差し指を一本立てた。
一億円ということだ。
「そっちのお金をそんなに欲しいわけじゃないから、破格の値段だと思う。一億円は。どう? 欲しい?」
「ええ。是非とも。富裕層に売りつけます。私達の分もよろしくお願いします」
「あれ、中国は共産主義じゃなかったっけ。いいの? 富裕層以外に行き渡らなくて。共産主義とは、ある意味平等を目指すものでしょう?」
レオンは疑問を口にする。
共に産み出すのが目的の共産主義。
家も工場もすべて政府からの借り物。
自分のものにできない。
だが、死ねば自分のものじゃなくなるのだから、他の政策だろうと、案外変わらないのかもしれない。
永遠に自分のものにしたい――その考えは、富裕層ならではかもしれない。
貧乏だと持つものが少なすぎて、この世が地獄に思えるだろう。
誰かの助けを待つことしかできない状態は、足掻いても苦しい状態は、レオンには想像できない。
だけど、お金持ちであったとしても、辛くて苦しいことはあるのだ。
皆が知らないだけで。
誰に対しても胸を張って言えるようなことをしてきたわけじゃないのなら。
鬼山怜音は良いことをして、悪いことを帳消しにしようとしてきた。
だが無理だったのだ。
思いは一方通行で、誰からも返ってこなかった。
いや、『ありがとう』をいわれたことがあるから、一方通行なだけだったとは言い難い。
「貧民には内密にします。いずれそちらの世界で暮らせるようになれば、必要ないでしょう。暴動が起きたら、困ります」
「秘密にする方が、バレたときに暗殺されるかもよ?」
「そこまでの力や知恵を持つ貧民はいません。それに、私にはボディガードがいる」




