永遠の若さを保つ妖怪と老いる人間
「数人だけなら、可能かもしれない。こっちで新しい国をつくるのに、王がいないと困るからね。中国は皇帝だっけ。昔、始皇帝っていう、偉い皇帝がいたんだよね。こちらに来たときも、偉い人が相応の地位についてもらわないといけない。だけど移民を許せるのは、数人まで。まだ実験段階で、いきなり大勢を受け入れるのは想定外だから。統治する際、こちらの種族を新しい国の国民にする。人間の中で最も魂の磨かれた傑物を紹介して」
レオンは両手を使って、二等辺三角形を作り、交渉した。
「それならば、かの孫子の生まれ変わりと称される林慈雨を紹介します。今回の移民や統治が上手くいけば、大量移民も考えてくれるのですね?」
「皆と相談してからになるけど」
「とてもいい暮らしができると言っていましたね。我が国は貧富の格差が大きく、貧民も多数います。我が国から貧民をなくすには、移民を受け入れてもらうしかありません。そちらの世界には、貧乏な人はいないのでしょう?」
「うん。みんな働き者だし、資源も山ほどある。地球よりももっと環境がいいと思う。なんせ、できたてだからね。その代わり、ときが経つのが早い。僕とメドが共同開発したクロノベッドで数千年は生きられると思うけど、こっちの世界では、地球の時計で十年から三十年くらい。短い生涯になるかもしれない。不老不死の秘薬をつくれるのなら、つくってあげたいけどね。確か、中国では仙桃がそうなんだっけ?」
「仙桃は万能の秘薬として扱われていますね。ですが、不老不死になった者などいません。人間の永遠の夢ですが、叶いそうにありません」
「生き証人がいるよ、ここに。まあ、人じゃないけどね」
レオンは自分を指差してアピールする。
「なんと……!」
「僕は不老不死だ。みんなが死んだとしても、僕だけは生きる」
「研究したい」
目を爛々と輝かせる国家主席。
「無理だよ。僕の血を飲んだりしても眷属になるだけで、寿命が延びたり若返ったりしない。あっちの世界で唯一僕だけが死というしがらみから逃れられる。……けど、誰とも添い遂げられないのは、幸福かな?」
レオンは究極の質問を投げかける。
命は限りがあるから美しいとされる意見とできるならば一生若いままで一生生きていたいとされる意見の二つに分かれる。
見た目の美しさを求める女性達にとっては、不老不死は喉から手が出るほど欲しいものだろう。
アンチエイジングや美容に時間やお金を使わなくて済む。
ないからこそ欲しくなる。
だが、持ってしまえば、永遠の時間が退屈に感じられるのだ。
恋人も友達もみんな先に逝く。
何もかもが虚しくなることもある。
みんなときの流れに逆らえず、レオンから離れていく。
どれだけ辛く苦しくても、自分一人だけは生きていかなければならない。
永遠の別離で、心が壊れそうになっても。
「しかし、持つ者と持たざる者の意見は、どちらも正しいと思います。老いがあるから、いつまでも若く美しく在りたいと思うのでしょう」




