65.九尾の星詠み ④
わざと低い声で、胸を張って――
「『兄貴のためにブレスで焼け野原にしてくるぜ!!』……と」
「ヤメテ!! そんな物騒なことしないからね!?」
(冗談にしても笑えないから! いや、ドランヴェルクなら本当に言いそうで余計に怖いんですけど!?)
白蓮は楽しげに尾をひと振りし、口元を緩めた。
「……ふむ。やはり星の導きに狂いはなかったのう。お主の周りは、なかなか愉快そうじゃ」
「愉快なだけで戦はしませんからね」
「皇国を欲しくないと申すか」
「欲しいとか欲しくないとかじゃなくて……そもそも僕のキャパを考えてくださいよ!」
「ならば――」
白蓮が一瞬、瞳を細める。
胸の奥に秘めていた本心を、さらりと吐き出すかのように。
「妾をここから連れ出して……お主の後宮に加えてもらおうか」
「……はいぃっ!? なんでそうなるのですか?」
ユーリが裏返った声を上げると、白蓮は口元に手を添え、ふわりと微笑んだ。
狐耳が小さく揺れ、尾がゆらりと一度だけ揺れる。
「ここにおっても……そのうち国へと戻されるじゃろう。
なれば、皇国の手が届かぬところに行きたいと思わんか?」
その声は柔らかかったが、その瞳の奥に、わずかな翳りが滲んでいた。
「確かにそうですけど……」
ユーリが言い淀むと、オフィーリアの声音がわずかに低くなった。
「貴方様、ここでハクレン様をお連れになる、ということは――すなわち王太后陛下と事を構えることになりますのよ」
冷ややかな瞳が、真っ直ぐにユーリを見据える。
「そうだけど……」
ユーリは小さく息を吐き、視線を落とす。
「でも、このまま白蓮さんを放っておくことも……僕には、できないんだ」
(だって……なんか捨てられた子犬みたいな目してるし。
狐なのに。いや狐耳ついてるのに、なんで子犬っぽいんだよ……)
そんなユーリを見つめながら、白蓮は静かに口を開いた。
「妾は星を通して、少し先の未来を詠むことができる。
もし……お主の悩みを一つ、妾が解きほぐしてみせたら――そのときは、妾を迎え入れてくれるかの?」
「未来が見える?」
ユーリの胸がぎゅっと縮む。
脳裏に浮かんだのは、ミュゼリアナの今にも涙が零れそうな横顔。
(……もし、この人が……ミュゼの未来を変えられるというなら……)
(でも、未来が見えるって……本当に信用していいのか? いや、けど……俺は……)
答えを出せずに悶々としていたその時――
「では、始めようかの」
白蓮がふわりと立ち上がり、すっと衣の紐へと手をかけた。
さらり――と上布が肩を滑り落ち、月光のような白い肌があらわになる。
「ちょ、ちょちょちょ!? なんで脱いでるんですか!!?」
反射的に両手で目を覆う。
だが耳に届くのは、布の擦れる甘美な音。
悪魔の楽器が、脳を直接くすぐってくる。
(ダメだダメだダメだ!! 見ちゃいけない……!)
――なのに。
指先をほんの少し動かし、隙間を作ってしまう。
チラリ。
(うぉっ……すご……! サラシって、こんなにペチャンコになるの!?)
乾いた口で、ごくりと唾を飲む。
視線は釘付け。
呼吸は荒くなる。
(裸なんて見せちゃダメだから!! ……って言いつつ、手の隙間から覗いてる俺が最低だぁぁ!!)
羞恥と興奮と自己嫌悪がごちゃ混ぜになって、頭が爆発する。
その横で、オフィーリアはすっと立ち上がり、冷静に裾を整えた。
「……では、私は床の準備を」
「いやいやいや!! まだ、それはダメだよね、早いよね!?」
全力でツッコミを入れるユーリに、オフィーリアは涼しい顔で小首を傾げる。
「どうせ手を出されるのですから、早いか遅いかだけではなくて?」
「違うからぁぁ!! なんで既成事実が確定路線みたいになってるの!?」
騒ぐ二人をよそに、白蓮は頬をうっすら赤く染め、そっと胸元を押さえた。
【あとがき】
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