表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旦那様のお仕事はハーレムです~商人チートで最強領地~  作者: 葛餅もずく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/237

65.九尾の星詠み ③

「っていうか、実はこれ……シードルなんじゃ?」


「……葡萄酒ですから」


 オフィーリアが即座に切り返す。

 

「潮風を含んだ大地を思わせる爽やかな味わい……葡萄でなければ、この奥深さは出ませんわ」


 そう言って、彼女はゆっくり目を閉じ、香りを確かめるように一口。

 頬を淡く染め、夢見心地の表情を浮かべた。


 ユーリは思わず言葉を忘れる。

 ただ、その横顔に見惚れてしまっていた。


(……やっぱり、黒髪……いいなぁ)


「なにを乙女のように見惚れておるのじゃ、お主は?」


 白蓮の涼やかな声に、ユーリはびくりと肩を震わせ、慌てて視線を逸らす。


「い、いえっ……別に、その……。そ、そういえば、僕に何かご用があったんですよね?」


「ふむ……実はな。お主に、ひとつお願いしたいことがあるのじゃ」


 静かな声色に、ユーリもオフィーリアも思わず息を止める。

 塔の空気が、ぴんと張り詰めた。


「……何でしょうか?」


 ごくり、と喉が鳴る。

 次の言葉を待つ間の一拍が、やけに長く感じられた。


「――皇国を、滅ぼしてほしいのじゃ」


 ぽつりと落とされた一言。

 その瞬間、蝋燭の炎さえ凍りついたかのように揺れを止め――

 部屋に重苦しい沈黙が落ちる。


「……はい?」


 白蓮の言葉が頭に入らず、ユーリは間の抜けた声を漏らしてしまった。


(は? えっ、今……滅ぼすって言った!? 皇国を!? 無理無理無理! 僕ただのインチキ商人だよ!?)


 隣のオフィーリアもぽかんと目を瞬かせている。

 張りつめた沈黙が、余計に耳に痛い。


(これは……姫なりの冗談、なのか? 冗談にしちゃ重すぎるんですけど!!)


 頭の片隅に、かつて聞いた歴史の逸話がよぎる。


 ――ハクオウ皇国は、初代勇者の仲間が建国した由緒ある国。

 数十年前には、狸獣人の狸小路たぬきこうじ康家やすいえが朝廷から大将軍に任じられ、やがて軍事クーデターで幕府を開いた……。


 思考が空回りし、口から出た言葉は――


「えーっと……それはつまり、今の“幕府”を倒してほしい、ということですか?」


「……幕府も朝廷も、皇も含め、腐りきったものすべてじゃ」


 白蓮はくすりと笑みを洩らし、揺れる狐耳を小さく傾ける。


「皇国を――手に収めたくはないか?」


 その瞳は冗談を言っているようなものではなかった。


(……ま、マジか。本気で言ってる、この人……!?)


 ユーリは心の中で頭を抱える。


(戦争なんて……なんの生産性もないから絶対やりたくないって!!)

(だいたい僕にはミュゼのこともあるし――)

(下着を作って売らなきゃいけないし、領地改革もあるし、ラグジュアリア構想だって途中だし……!)

(正直、後宮ハーレムの運営だけで……もう手一杯なんですけど!?)


「え、えっと……すみません。いま僕、戦争とかちょっと……領地経営と、下着のことで手一杯で……」


 一瞬の沈黙。

 白蓮の瞳が細められ、かすかに狐耳が揺れた。


「領地経営は分かるのじゃが、下着……とは何のことじゃ?」


「……貴方様」


 すぐ隣で、オフィーリアがため息まじりに呟く。

 涼やかな瞳が真っ直ぐに突き刺さり――


「それではただの変態ですわよ?」


「ち、違うから、作って売るので忙しいって話だから!!」


「ふむ? お主、ドラゴンを従えておるのじゃろう?」


 白蓮は小首を傾げ、さらりと言い放つ。


「そんなもの、手間などかからぬではないか」


(いやいやいや! かかるから! めっちゃかかるから! 俺の精神衛生上負担かかりまくりですから!!)


 ユーリが全力で心中ツッコミを入れている横で――


「……ふふ」


 オフィーリアが堪えきれずに噴き出した。

 黒髪を揺らしながら、アメジストの瞳を細め、にこりと笑む。


「確かに……黒竜ドランヴェルク様のことでしたら、きっとこう仰るでしょうね」


【あとがき】

読んでいただきありがとうございます!


ユーリの嫁国家計画、応援したいと思ってくださったら、

⭐評価と❤、ブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ