表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旦那様のお仕事はハーレムです~商人チートで最強領地~  作者: 葛餅もずく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/237

65.九尾の星詠み ①

 竜族を歓待する晩餐会の喧騒から隔たれた王城の一角。

 人目を避けるように建てられた塔の最上階。

 厚い石壁に守られた静かな室内で、オフィーリアは姿勢を崩さず控えていた。


 窓辺のそばに置かれた小さなテーブルに椅子が三つ。

 その席に佇む女性の輪郭を、揺らめく蝋燭の明かりが浮かび上がらせる。


 金糸のような髪が炎の揺らめきを映して背を覆い、

 頭の上で揺れる二つの狐耳だけが、彼女が獣人であることを示していた。


 塔の上に幽閉されているというのに――その横顔には苦悩の影ひとつ見えない。


天津上宮あまつかみのみや様、お紅茶をお持ちいたしましょうか?」


 オフィーリアが声をかけると、彼女がゆるやかに顔を上げる。

 星を閉じ込めたかのような瞳が、ひとときこちらを射抜いた。


「……妾のことは白蓮ハクレンと呼んでよい。その呼び名は骨が折れよう」


 ふと、白蓮の唇の端に淡い笑みが浮かんだ。

 蝋燭の炎が揺れ、その微笑は一瞬きらめいて――すぐに溶けて消える幻のように儚い。


「せめて、この狭き塔の中くらいは……堅苦しい衣を脱いでいたいのじゃ」


 声音はやわらかいのに、どこか遠い調べを思わせる。

 オフィーリアは思わず息を呑んだ。

 高嶺に咲く花が、ほんのひととき、目の前まで降りてきたような――そんな錯覚に囚われる。


「分かりました、ハクレン様。それでお紅茶はお入り用でございますか?」


「いいや……」


 白蓮は、ちらと横顔を窓の方へ向け、星影を見やった。

 長い睫毛の奥で、瞳がわずかにきらめく。


「それより――其方の夫。あの者のことを、少し聞かせてくれまいか?」


 思わぬ言葉に、オフィーリアは瞬きを忘れた。


「ユーリ様のことをですか?」


 努めて平静を装いながらも、胸の内に小さな熱が宿る。


「先ほど連絡がありましたが……もうそろそろ夜会を抜けて、こちらにお越しになるとのことです」


 その言葉で、白蓮の瞳にふっと灯った光。

 それは星明りを受けただけかもしれない――

 けれど、オフィーリアの目には、待ち望む者を想う微笑に見えてしまった。


(……なぜ、旦那様を?)

(皇国の姫と、旦那様が知り合いなはずはございませんのに……)


 黒竜討伐の噂は、王都から遠く皇国にまで届いているだろう。

 だが、それだけで姫がわざわざ問いただすものだろうか。


(セリーヌ様からは、彼女も後宮ハーレムに……と仰せでしたが……)

(いざ目の当たりにすると、どうしたものか……)


 オフィーリアが小さく息を整えると――


「じゃが、ここは塔の最上階よな……。妾に、そう易々と会えるものなのか?」


 白蓮は何気なさそうに言いながら、ちらと窓へ視線を流す。


「……いいえ。ここへの出入りは厳しく監視されております」


 努めて冷静に答えたつもりが、声がわずかに上ずる。

 その反応に、白蓮は唇の端をかすかに吊り上げた。


「そうじゃろうな。窓には鉄格子まで掛けられておるし……さて、どうやって入ってくるつもりかの?」


(ほんと……どうやって入ってくるつもりなのでしょうか……

 扉も窓も固く閉ざされていますが……)


 白蓮の言葉につられ、オフィーリアは部屋で唯一の出入り口である扉へと視線を向けた。

 見た目はただの木の扉にすぎない。

 だが、その向こうに衛兵が控えていると思うと――鉄の扉よりも重く感じられた。


(もしかして……小鳥に姿を変えて入ってくる、とか!?)


 思わずそんな突飛な想像がよぎり、慌てて白蓮の方へ視線を戻す。

 すると――窓辺に、いつの間にか一羽の小鳥が留まっていた。


「これは何とも珍妙な……」


 白蓮が、ひとりごとのように吐息を洩らす。

【あとがき】

読んでいただきありがとうございます!


ユーリの嫁国家計画、応援したいと思ってくださったら、

⭐評価と❤、ブックマークお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ