61.再会 ②
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隣で「ん……ふふ……」と甘い寝息を立てるオフィーリア。
(……え、マジで? 本当に出すつもりなの、この手紙……?)
(“昨夜のお楽しみ報告書”とか、正気かリア!?)
(しかも“忠実なるしもべ”って……いやいやいや! 忠実どころか、王太后に正面から喧嘩売ってるんですけど!?)
その幸せそうな寝顔を見ながら、ユーリの脳裏に浮かんだ言葉は、ただひとつ。
――女の戦、こわっ。
そんな“嵐の夜”を終えた本日。
オフィーリアは王太后陛下との面会へ。
イレーナたちはギルド本部、アイナは竜族親子の観光案内。
そしてユーリは、アリシアと共に星導教会へ。
頬に熱を残したまま、ふと昨夜の残像が脳裏をよぎる。
(……やっぱり、ドロワーズって色気ないよな……スケスケの……いやいやいや!!)
(――って、俺、何考えてんの!? 変態か!? 変態すぎるだろ!!)
ぶんぶんと頭を振り、必死に誤魔化す。
(違う! 産業革命だ! 文明の担い手だ俺!)
必死の言い訳もむなしく、アリシアが横目でふっと微笑んだ。
――「分かってますよ」と言いたげに。
全部聞かれていた気がして、耳まで真っ赤になる。
そのとき、回廊の向こうから神官服の列が静かに歩いてきた。
視線が、先頭を歩く女性に引き寄せられる。
神官服をまとっているのだが――
陽光を受けて透けるような絹のドレスは、胸元が大胆にカットされ、柔らかな谷間を真珠のように浮かび上がらせている。
(煩悩に勝つ修行か?)
その後ろには、純白の女性用神官服に身を包んだ美少女たちが五人ほど、静かな足音を揃えながら、列になって歩いてくる。
(無理でしょ!! どう考えても無理!!)
(俺の後宮より凄いじゃんこれ……)
(大聖院? いやもう絶対、エロ院だよね!!)
甘いうら若き乙女の香りが重なって渦を巻く。
危うく凝視しそうになって――慌てて下を向く。
衣擦れの音とともに、すれ違う行列。
そして、最後の一人とすれ違った瞬間。
「……兄さま……? もしかして……ユーリ兄さま?」
耳元にそっと触れるような、あまりにも懐かしい声。
時が――止まった気がした。
(……この声……まさか)
胸の奥で、何かが弾けるように跳ね上がる。
無意識のうちに顔を上げていた。
静かに振り返った視線の先――心臓が激しく脈打つ。
長く伸びた青い髪が、陽光を帯びて淡く輝く。
リボンが風に揺れ、肩にかかる柔らかなカールがなびく美少女。
その瞳は――涙をこらえるように震えていた。
(……誰……だ? いや……知らないはずなのに……)
胸の奥から聞こえる声。
『またあの時のように手を離すのか?』
記憶の奥底を、遠い夏の日のような感覚がかすめていく。
掴もうとしても、指の隙間から零れ落ちるように形を成さない――
けれど、胸の奥が妙に熱くなる。
気づけば、視線が彼女の輪郭を追っていた。
首元で交差するストラップが鎖骨をすべり、白い肌の曲線をより際立たせる。
艶やかな唇に、すっと通った鼻筋――どれもが“幼さ”とは遠く、大人びた艶を秘めていた。
(知らないはずなのに……知ってるって叫んでる……)
肌に吸いつくような絹地が、ウエストで結ばれた帯によってさらに引き締められ、
そこからふわりと広がるスカートの揺れが、まるで艶やかな花が咲く瞬間のように美しい。
「……本当に……ユーリ兄さま、なんですね……」
その声は、風に溶けるように儚かった。
(……『ユーリ兄さま』って……)
記憶の底から呼び起こされる、優しく甘えたあの声。
そう呼んでくれた子は――たったひとりしかいない。
(まさか……本当に……ミュゼリアナ……?)
呼吸が浅くなる。胸の奥で、心臓が痛いほどに脈を打っていた。
そのとき、彼女が――ミュゼリアナが、
胸元でそっと手を重ねるようにして、指をきゅっと絡める。
祈るような、あるいは、確かめるような仕草。
それだけで、胸が締めつけられるような思いがこみ上げる。
「あ、あぁ、もしかして……ミュゼ……か?」
その言葉に、彼女は小さく息を呑んだ。
そして――瞳から、ぽろりと涙が零れる。
「……はい……っ」
震える声で、ミュゼリアナが小さく頷く。
涙を拭おうとはせず、そのまま微笑んだ。
やがて、彼女の手がふらりと空を掴むように動く。
気づけば、一歩、また一歩と、ユーリへと歩み寄っていた。
【あとがき】
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