表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2.「ミサはスーパー神だワン」

拾った子犬が喋りだして驚いたミサ。

驚きつつも、からあげの質問に答えていた。


「・・・なるほど。

つまり、ミサは犬を愛するスーパー神で、犬を助ける仕事がしたいってことワンね。

それにつけ込む腹黒い犬に、その傷をつけられたってことワン・・許せないワン」


うん・・・半分くらいは当たってる。

ちょっと私のこと美化しすぎじゃないかな・・・


スーパー神ってなんだ。


でも、自分のために怒ってくれているからあげに、ミサは悪い気はしなかった。


というか、むしろ嬉しい。


「腹黒い犬ってことではないよ!きっとその犬は理由があって私を噛んでるんだと思う」


「ミサは優しいワンね。そういう優しいところがからあげは好きだワン」


からあげは素直に思ったことを言う性格らしい。

『好き』なんて言われたことないミサは、嬉しいんだか恥ずかしいんだかくすぐったい気持ちになった。


しかも今まで噛まれたり引っかかれたり、吠えられたりしかされたことない犬に『好き』って言われるなんて!


「私もからあげが好き!でも、なんでからあげは私を噛んだりしないの?

私、犬のこと大好きだけど、今まで犬からは好かれなかったんだ。一方通行の愛だった」


なんで喋るの?という質問の方が先の気がするが、

ミサはとにかく大好きな犬と初めて両思いになったのが嬉しいらしい。


「噛むなんてとんでもないワン!ミサが犬への愛があるって1日一緒に過ごしてわかったからワン」


そう、昨日はミサにとっては当たり前になっていたが、からあげにとっては驚きの1日だった。


雨の中からあげを拾って、傘はからあげが濡れないように。

ミサの肩はびしょ濡れだった。


動物病院で怖くて震えているからあげに、優しく「大丈夫だよ」と何回も言って撫でてくれる。


お風呂は、ペット専門学校で習った犬に最適な温度。シャンプーも上手でとても心地良い。

何より、ミサはとても嬉しそうに話しかけてくれた。


「からあげ、気持ちいいね〜、あら、良い毛並みが泥がとれてもっとサラサラになったね〜

からあげ、モデルわんこみたいにかっこいいね〜キャー!スターわんこ!かっこいい!」


ご飯は、まだ小さいからあげが食べやすい大きさに切ってくれた。

そして寝る時はふわふわのお布団。からあげが寝付くまで撫でてくれた。


「神様だと思ったワン。ミサのために何かしたくて、話しかけたワン」


茶色のしっぽを一生懸命振りながら、からあげが言う。

「からあげの気持ち、嬉しいよ」


「ミサー、声が聞こえるけど、誰かと話しているのー?」

お母さんだ。


ミサは慌てて答える。

「ちょっと電話してただけだよ」


いけない。もうこんな時間だ。からあげと話すのが楽しくて思ったより時間が経っていた。

からあげと一緒に散歩しようと思ってたけど、今日は無理そう。


小声でからあげに言う。

「からあげ、ごめん。今から学校行ってくるから、待っててね

狭い部屋だけどごめんね」


小さい部屋だけど、ミサは気に入っていた。

4畳半の和室。勉強机と布団をしくと残りのスペースは少ない。


テレビと犬のぬいぐるみが置かれている。


「わかったワン。これ、見てて良いワン?」


からあげはテレビを見ながら言った。





16時頃に授業が終わって家に帰った。


今日の実習でも、相変わらず犬に噛まれて引っかかれたミサ。

でも、帰ったらからあげがいる。


私のこと大好きなからあげがいる、というのはミサの心の支えとなっていた。


コンビニでからあげのご飯だけを買うつもりだったが、おやつとおもちゃが目に入った。


「からあげ、これ買ったら喜ぶだろうな」


つい、手にとってレジに並んだ。


「ただいまー」


部屋に帰ると、座布団の上でからあげが寝ている。

おへそを上にして、真っ白なでもふもふな毛が丸見えだ。


「からあげ、背中と顔は茶色だけど、お腹は真っ白なんだ。かわいい」


と、ヮンーと声を出しながら少し目を開けるからあげ。


「ミサ、帰ってたワン?今日もお疲れ様ワン」


「ありがとう、お土産買ってきたよ」


「ワンワン!おやつとおもちゃワン!?」


からあげは座ってレジ袋を持つミサの膝に前足を乗せて、身を乗り出してしっぽを一生懸命振っている。


「じゃーん!」


「やっぱりミサは神様ワン!」


ガツガツとおやつの犬用クッキーを食べながら言う。

骨の形で、カルシウムが豊富らしい。


「今日1日テレビを見てわかったことがあるワン!

いろんなニンゲンを見たけど、ミサが一番可愛くて優しいワン、神ワンね」


おやつを食べ終わって、口の周りをぺろぺろしながら言うからあげ。


褒められ慣れていないミサは、照れているようだ。

「からあげは褒め上手だね。照れちゃうよー」


赤くなった顔を手で覆うと、からあげはじっとミサの腕を見る。


「新しい傷が増えてるワン。今日もやられたワン?」


「うん・・・今日はマッサージ実習だったんだ。私、マッサージ下手なのかな」


「いいこと思いついたワン!からあげにやってみるといいワン!

からあげは気持ちいいし、ミサは練習できるし、一石二肉ワン!」


それをいうなら一石二鳥。からあげは肉が好きらしい。

今度、お肉もあげてみよう。


「いい考え!マッサージするから感想教えてね!」


「ミサの役に立てる!」とからあげは思わずしっぽを振っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ