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8歳。元勇者少女の行く末は  作者: どどどどどん
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「おねえちゃん」

「え、えっと…。」


お姉ちゃんって、私のこと言ってる…?

というか魔物はドアの前に突っ立ったままで何してるの。


死体は動くしお姉ちゃんって言われるし魔物は呆然としてるし何この状況。

戸惑っていると、私と同じように困惑しているように見える魔物がふと口を開いた。


「…お、い。お前を何した?」

「…なにをって、どういうこと。」

「だから、そいつに何かしたかって聞いてんだ!」


漸く意識がこちらへ戻ってきた魔物は、焦っているのか驚きすぎたのか、まくしたてるような口調で質問してくる。


何をしたって、ただ脈を確かめて…あとは私より幼い子がこんな魔物に殺されたのが悔しくて悲しくてよく分からない感情が込み上げてきて、少し頭を撫でただけだけど。


素直にそう答えるとそんなはずないだろうと怒鳴られた。


まあそりゃあ殺したと思っていた人間がいきなり動いていたら驚くはず。頭を撫でたら生き返りましたなんて信じられるはずもない。

けれど実際そうなのだから仕方がない。


「嘘はついてない。あんたこそ、この子のことた食べようとしてたんでしょ。何もしないってやっぱり嘘じゃない!」

「は…?」

「私のことも、どうせ食べるために連れてきたんでしょ!」


嘘なんて言ってないのに、嘘だと怒鳴られて。イライラする。

だから思ってたこと全部ぶつけてやった。

そうすると、さっきまで怒っていた魔物は急に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


何度も表情を変えてなんなの。こっちはいろんなことがあり過ぎて混乱してるんだ。

余計なことしてないで、さっさと私の話に答えてよ。

そうイライラしていた時だった。目の前の魔物は頭に疑問符を飛ばしながら言葉を発した。


「待て。お前そいつが人間だとでも思っているのか。」

「は!?死んだこの子は、もう人間じゃないっていうの!?」

「ちげぇ。うるせえからキャンキャン吠えるんじゃねぇ。そいつは元々人間じゃねぇっつってんだ。」

「そ、んな嘘が通じるわけ…!」


そうだ、だって私は相手が魔物だったらどんなにその気配を、オーラを消していても察知することができるはずなのだ。


もしかしてこの子は、あの男の魔物よりもさらに上のレベルの魔物…!?

私が気配を察知できないなんて、そんなの魔王レベルじゃ…


「言っとくけど、こいつ魔物でもねぇからな。」

「え?」

「ロボットだよ。そいつは。修理してもずっと動いてなかったんだ。それが急に動き出した。だから何をしたんだって聞いたんだよ。」

「ロ、ボット…?」


焦ってイライラしていた気持ちが急速に落ち着いてゆく。

どこからどう見ても人間のこの子がロボット…?

そんな馬鹿な…。


暫く放心していると、魔物が「信じられないならそいつの目を覗き込んでみな。」と言ってきた。


未だに私の服をつかんで不思議そうにこちらを見てくる子と目線をあわせ、目を覗き込んでみる。


良く見ないと分からないけれど、瞳はガラス玉で、奥では小さな機械のようなものがキュルキュルと動いているのが分かった。

紛うことなきロボットだ。

…良かった、殺された子ではなかったのだ。


「納得したかよ。で、改めて聞くけど、お前そいつに何したんだ?」

「いや、だからさっき言ったことしかやってないって。」


ロボットなのは認めるけど、何度も何をしたか聞かれたって同じことしか答えることは出来ない。


それなのに魔物は何度も何度もそんなはずはないと言いながら私に詰め寄ってくる。

でも私はこの子が殺された人間だと思っていたんだから、ロボットとして修理したりするわけないんだって。


「…まぁ、それもそうか。…悪い。」

「…あんた、謝ることできるんだ。」

「殺すぞクソガキ。」


急に謝ってくるもんだから拍子抜けした。

謝ることも感謝することもしなさそうな魔物だと思っていたけれど、そうではないらしい。

それはさておき、服をいつまでたっても離そうとしないロボットに声をかける。


「えっと…あなた話せるの?」

「うん。」

「名前は?」

「無いよ。」

「そっか…。じゃあ、なんで私のことお姉ちゃんって言うの?」

「私より大きい女の子だから。」


うーん。答えになっているようでなっていない。

持っている情報知識をそのまま淡々と話しているだけのように見える。


ロボットなのだから、当たり前だけれど表情だって微塵も動かない。

人間と話しているようには到底感じられなかった。


「おい、お前。なんで急に動き出したんだ。」

「動けって命令が聞こえたから。」

「いや、私は言ってないけど。」

「俺が今まで何回も言ったことあるわ。微塵も動かなかったじゃねぇか。どういうつもりだ。」

「聞こえてない。」

「てめぇっ…。」


魔物のこめかみが分かりやすくピクピクしている。

そんなにイライラして血管切れても知らないよ。

そんな魔物を横目に、私は再びロボットに向き合う。


「ねぇ、名前がないなら不便だから私が付けてもいい?」

「うん。」

「じゃああなたの名前はリラ。私と一文字違いの名前よ。」

「リラ。」

「そう。私はララ。今日からここに住むからよろしくね。」


ロボット…いや、リラはその名前を新しくインプットするように何度も口で唱えている。

そこでふと、あることに気が付いた。


「そういえば、あんたの名前はなに?私はララ。」

「あ?」

「だから、名前よ名前。呼べないと不便じゃない。」

「…普通に魔物でいいだろうが。」


魔物は苦虫をつぶしたような顔でそう言った。

何、そんなに名前を教えたくないわけ。


そう問えば、なんでお前は俺に名前があると思うんだと訳の分からないことを言ってきた。


「どういうこと。」

「俺は魔物だぞ。名前があるなんて考える方がおかしいだろ。」

「なんで。」

「なんでって…。」

「意味が分からない。さっさと名前ぐらい教えなさいよ。それともあんたも名前無いの?」

「お前、家主にたいして態度でかすぎだろ。…テラだ。」


なんだ。渋るからよっぽど変な名前なのかと思ったけれど、いい名前じゃん。

何をそんなに渋ってたの。


「別に渋ったわけじゃねぇよ。魔物って知られた状態で名前なんて聞かれたの、これで2回目だから驚いただけだ。」

「ふーん。魔物ってそんなもんなのね。いい?リラ。あいつはテラ。私はララ。あなたはリラ。覚えてね。」

「覚えた。」

「偉い。」


機械だと分かっているけれど、感情なんてないだろうってわかっているけれど、なんだか撫でずにはいられなかった。


私は前世も今世も兄弟はいなかったから、なんだか可愛い妹ができたみたいでとても新鮮な感じがしたのだ。


そうして私たち3人(?)のへんてこな毎日が始まった。

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