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第26話「――俺も知りませんでした。母さんがあんなに強いなんて」

「――えっ、それじゃフレデリカの娘さんなの?!」


 ディエゴの企みとそれに協力した者たち。

 その洗い出しも進み、俺やレンブラントといった魔術師を使っての過度な要人警護も不要になるかと思われてきた頃。俺はエミリアナさんから昼食会に招かれていた。そろそろ俺が帰るかもしれないって話がなんか伝わったらしい。


「”息子”です。今はこんなナリですけれど」

「そっか、父さんのお得意さんだったんだもんね。いやー……」


 マジマジと見つめてくるエミリさん。

 包帯に覆われていた顔の傷もだいぶ良くなっていてマルセロの技量を感じる。

 火傷の痕をここまで消せるなんて。


「正直、自分でも信じられません。あと、この話は他言無用で。

 特にディーデリック殿下とうちの母さんには」


 エミリさんに身の上話をするつもりは全くなかったのだが、エド爺の話をしているうちにあれよあれよとボロを出してしまったのだ。それで色々と話す流れになってしまった。


「あの王子様なら気づいてそうだし、お母さんにまで秘密にすることある?」


 ふふっ、この人までディーデリックなら気づいていると判断するのか。

 やはり他人にそう思わせるくらいには聡い男なのだ。あの王子様は。


「母さんだから秘密にするんです。知られたらめちゃくちゃ面倒ですからね」

「親子喧嘩しちゃったし?」

「――俺も知りませんでした。母さんがあんなに強いなんて」


 魔力の糸を用いるマリオネットの魔法が得意技なのは知っていた。

 しかし、50代を目前にしてあんなに格闘戦まで強いなんて。


「まぁ、女1人で方々の街を転々としているだけのことはあるわ。

 私もあの人があそこまで強いとは知らなかったけれど」

「そういえば母さんとはどういう関係なんです?」


 シャミナード神父と言い、エミリさんと言い、俺の母さん顔広すぎだろ。


「どうと言われると難しいけれど、ちょうどここに嫁いできたばかりの頃に良くしてもらってね。惚れた男のためとは言え、貴族で軍人の嫁なんかやってるとなかなか大変なことも多くて。そんなときにちょっとね」


 ”確かあの時はアイスクリームを売ってたかな”なんて続けるエミリさん。

 ……それでアルフォンソ領の若奥様に顔を売るんだから凄い話だ。


「でもまさか、息子のことを守ってくれた人がフレデリカの息子さんとは」

「数奇な運命は感じます。エミリさんが無事で本当に良かった」

「……あー、そうだよね、心配させちゃったよね」


 死んでいてもおかしくないと思っていたのは事実だ。

 マルセロとその話をすることは避けていたが、あいつもそう思っていただろう。


「ええ、けれど過ぎた話です。本当にご無事で何より」

「そう言ってもらえると助かるわ。

 けれど、フランシスちゃんが本当は元冒険者だと聞いてよく分かった」


 なんの話だろう?と思うのと同時、そういえばマルセロの奴はしっかりと俺の正体について伏せていてくれたんだなと実感する。ディーデリックに伏せるのはお願いしていたが実母であるエミリさんにまで伏せているとは。口の堅い少年だ。


「――マルセロの奴がね、冒険者になりたいって」


 ッ……?! 正気かあいつ?!?!!


「医者になった方が良い。断言します、あんな仕事させるべきじゃない」

「あら意外と即答なのね?」

「エド爺から聞いてません? 冒険者なんてロクな仕事じゃない」


 まともな生まれを持っている人間が就く仕事じゃないんだ。

 ディーデリックが異常者なだけで。


「まぁ、私が言うのもアレだけど確かに息子にはやらせたくない仕事ではある。

 別に冒険者を見下してるとかじゃなく、息子まで失いたくないから」

「……確かに、軍人さんより死ぬ確率は高いですよ」


 ”西方戦争当時はともかく、今みたいな大きな戦乱のない世の中だと”


「そうなのよね、それは分かっているつもりよ」

「……エミリさんがそういう言い方をするってことは止める気ないんですか?」

「うん。今のところは」


 ……なんだ? 何を考えればそういう結論になる?

 夫だけじゃなく息子にまで先立たれたくないはずの彼女がなぜ?


「いやさ、このままマルセロを開拓都市に留学させられれば良いなって」

「えっ……?」

「成人まで5年でしょ、そこまでに引き上げさせるとして今だけは」


 なるほど、最後の最後で止めるつもりはあると。


「ディエゴみたいな奴が他に居るかもしれない、と?」

「まぁね。王子様の力を借りれば一掃できるとは思っているけれどさ。

 それでも、しばらくは城がギスギスすると思うんだ。万が一もあり得るし」


 確かに執政官の企ては既に公表されている。

 ディーデリックとその親衛隊のおかげでディエゴ一派そのものは捕縛できる。

 しかし、脆弱さを見せた地方領だ。何か起きてもおかしくはない。


「だからマルセロが大人になるまで遠ざけておきたい、と」

「そういうこと。それにあの街には学びが多い。それは知ってるつもり。

 あなたもそうでしょう? 開拓都市で身を立てたあなたなら」


 ……あんな田舎ではなく、この開拓都市で生まれていれば。

 そう思った回数は数えるのもバカバカしいほどだ。


「まぁ、そうですね。そうでなければ故郷を捨てて定住はしません。

 特に魔法という才能を持つあの子には向いた環境ではあります」

「……ねぇねぇ、フランクくん。冒険者ギルドって未成年禁止だよね?」


 思いついた不安に駆られるように質問を投げてくるエミリさん。


「ええ。だから殿下も成人を機に冒険者に。

 少なくとも15歳未満は冒険者にはなれませんよ」

「じゃあ、やっぱアリだわ。何年か留学させちゃうの」


 確かに良い話だとは思うけれど、その気のマルセロを開拓都市に留学させて土地勘を与えてしまったら、いざという時に止められるんだろうか。けっこう頑固なところのある子供だからな。


「――まぁ、まだまだどうなるか分からないけれど、もしそうなったときには」

「気には掛けますよ。俺もあいつの事は好きですから。

 ただ、あいつが成人になった時に止められなくても文句言わないでくださいね」


 こちらの言葉を聞いて、少し頭を抱えるエミリさん。


「……フランクくんもそう思う?」

「ええ。年頃なので何もしなくても考えが変わることはあるでしょう。

 けれど、こちらの思う通りに誘導できるとも思えません」


 マルセロを1人の男と思えば、なんて言えるほどの話ではないが。


「うっ……そう思えばそうなのよね。なんだかんだあの人に似てるから」

「俺にはエド爺の血に見えます。少しだけですけど」

「ふふっ、それもあるかも。まぁ、もう少し考えてみるわ」


 ご愛読ありがとうございます。3節と4節に跨ったエピソードもこれにて完結。

 物語は4節後半へと進んでいきます。

 一応、第1章「亡国のレコンキスタ」は5節で完結する予定です。


 長編のため、ちょっと初期構想より随所が膨らんでしまってだいぶ歪な章・節の構成になってしまいましたが、ゆるりと付き合っていただければ幸いです。

 下記ランキングタグでリンクを貼っている「ショタ魔王転生」は完結を意識して書きましたのでこの「女体化チート」とはまた違う読み味になっているかと思います。ぜひ読んでみてください。読まなくてもブクマと★だけでも入れてもらえれば私が喜びます。


 4節後半のストックを書き貯めるまでしばらくお休みします。

 せっかく1日当たり1500~2000PVも頂いているのに申し訳ありません……。

 その分、面白いお話を用意しますので、しばしお待ちくださいませ。

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