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第18話「神聖王国・第四王子からの密命を受けて動いている」

 ――正直なところ、ゴーレムは使いたくなかった。

 こちらの用意している最強の切り札だから黒幕に辿り着く前に露見させたくないというのもあるが、それ以上に”母さん”に見せたくなかった。


 フレデリカ・ブライアント・サンダースであれば万が一もあり得る。

 母さんがそうだと知っている魔法を、俺が元から得意としていた魔法を使えばこちらの正体を見抜かれてしまうんじゃないか。なんて不安があったから。


 しかし流石は母さんだ。俺に魔法を仕込んだ女。

 彼女に直接教わったのは12年前が最後だが、あれはまだまだ底じゃなかった。

 この12年でさらに経験を積んで強くなったのかもしれないけど。


「お待たせしましたわね、伯父さま――」

「……悪いね、勝てなかったよ、神父さん」


 妙なところでタイミングが被ってしまう。

 俺はアンソニーに、母さんはシャミナード神父に声を掛けた。


「いや、まさかこんな至近距離で魔術師同士の肉弾戦が見れるとは」


 アンソニーがそんな風に口を開く。

 俺たちが戦っているうちに何か動くかとも思ったが。


「……フレデリカ、君が戦ってくれている間、彼は私を手に掛けなかった」

「ええ。少なくとも貴方に送り込まれた口封じではない。

 それは信じても良いのでしょうね」


 こちらから離れてシャミナード神父の前に立つ母さん。

 アンソニーと神父の間に自分を置いたのだ。

 俺もアンソニーの真後ろに控える。


「さっきも言ったように俺はアンタに聞くことがある。

 セドリックという暗殺者を抱え、自らの姓を与えていたアンタに。

 けれど、その前にこちらのことを話そうか」


 頬の傷に触れながらアンソニーが言葉を紡ぐ。

 ……こうして母さんと向かい合っていると、少しだけ母さんの方が背が高い。

 母さん自体が女にしては背の高い方だけれど改めて小さいな。


 少女となった俺の身体の方がずっと小さいからあんまり気にしていなかったけれどアンソニー・グッドゲームという男はかなり小柄だ。そういう意味でも王国騎士団らしからぬ男なのだ。


「――俺の名は、アンソニー・グッドゲーム。

 神聖王国・第四王子からの密命を受けて動いている。

 その目的は言わなくても分かるよな?」


 ほう、ここで自分の身分を全て明かすのか。

 なかなかに覚悟が決まっている。

 眼前の相手、その1人が俺の母親だと知っているからこそか。


「……君のような男が来ると思っていた。あるいは口封じの方が先かと」

「セドリック・シャミナードのことについて全てを教えてもらうぞ」

「その前に聞きたいんだけど、貴方が王子様の部下だって証拠ある?」


 シャミナード神父の方は洗いざらい喋ってくれそうだった。

 けれど、母さんが横槍を入れてくる。

 思っている以上に神父の味方なんだな、いったいどんな関係なのか。

 というよりもどこまで今回の一件を把握しているのか。


「アンタらが西方戦争時の王国騎士団を知っていればと思ったが、それなら俺の名前で反応してくれているか……そうだな、マルセロ坊ちゃんが襲われたときのことは知っているか?」


 アンソニーの言葉を聞きながら”新聞に書かれている程度は”と答える母さん。

 一応、アルフォンソ領の新聞には既に目を通している。


「ならマルセロを救ったゴーレム使いのことも知っているよな?」

「……フランシス・パーカー、だったかしら?」

「そういうことです。私以上のゴーレム使いは開拓都市には居ません」


 言いながら自分の手のひらで、人形サイズのゴーレムにお辞儀をさせる。


「……分かりました、今は信じましょう」


 そう告げた母さんがシャミナード神父に視線を送る。


「どこから話せばいいか。約20年前、確かに私はあの子を引き取った。

 だが、君の言うように暗殺者として抱えていたわけじゃない。

 信じてはもらえないかもしれないが……」


 暗殺ギルドが王都から一掃された時期、レンブラントの見立て通り。


「信じますよ、あなた達が俺のことを信じてくれたように」


 アンソニーが思わぬ言葉を口にする。こういうことを言える男だったのか。

 身内には優しいが、嫌疑をかけた相手には厳しいものだとばかり。


「……ありがとう。私は、あの子を普通の人間として育てたかったんだ。

 ゆくゆくは私の跡を継がせるつもりだった。この教会を」


 セドリックを兄と慕う靴屋の少年。

 あの子を思い出せば、あながち嘘でもないと思う。

 では、いったい何があってこんなことに。


「……誰かに依頼された?」

「ああ。セドリックが西方戦争に従軍したあたりからだ。

 あの子の卓越した魔法に目をつけた人間が居たのだと思う」


 確かにあの爆破魔法、冒険者としてもやっていける腕があった。

 それに仕掛けられた爆破トラップの数々。

 彼の過去に至るかどうかはともかく、目をつけるには充分。


「あの子が誰かと頻繁に連絡を取るようになっていたのは分かっていた。

 何か危ない橋を渡ろうとしている、そんな雰囲気を感じ取っていた。

 そして1か月と少し前だ。あの子は私に世話になった礼だと」


 大金を残して姿を消したと神父は続ける。


「”自分自身の生まれを全うしてみたい”なんて言っていたから心配になって」

「それで相談を持ち掛けられたのが私なんだよね。

 フランシスちゃんにまで名前が轟く、凄腕魔術師フレデリカ様」


 なんてウィンクしてくるフレデリカ。

 ……いや、これなんか含みがある気がするんだが。

 こちらが母さんのことを知っているのは不自然だと確信してるような。


「セドリックを動かしたのは誰なんですか?」

「――確証はない。

 が、西方戦争に従軍していてマルセロ坊ちゃんを狙う動機があるのは」


 執政官のディエゴ・イバルロンドか。


「セドリックが失敗した以上、神父様の口を封じに誰か来るかなって。

 しばらく動きが無かったらディーデリック殿下のところに助けを求めるのもアリかなとは思っていたんだけど下手に領主城に近づくのも危ないでしょ?」


 ディーデリックに繋いでもらう前に黒幕に目をつけられたら終わりではある。


「だから、口封じを捕まえれば首謀者を確定できるかなって待ってたんだ。

 逆にディーデリック殿下側の人間がここに辿り着いても良いしね」


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