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⑴『堕落現象、についての思想評論』
⑴『堕落現象、についての思想評論』
㈠
堕落という言葉がある。所謂、退廃という言葉とも近い言葉であるが、例えば、坂口安吾の『堕落論』などを読んでも、分かったようで、分からないという感じである。第二次世界大戦後の、日本の堕落について、敗戦による堕落ではなく、元来、人間は、人生、堕落へと向かうという、内容である。
㈡
この、分かったようで、分からない、という感覚は、恐らく妥当ではないだろうか。つまり、堕落とは、堕落した者にしか、分からない感覚である、ということである。また、その堕落の段階にも、言及すべきだろう。急速に堕落したのか、少しずつ、堕落したのか。
㈢
しかし、堕落論の一方的な見解の失敗は、堕落せずに、一生を終える人も居るということである。身体的、精神的に、崇高な状態を保つことである。堕落者は、崇高美を堕落させようとする。つまり、堕落論の欠点は、堕落だけが人生ではない、という事実に有るということである。これは、一つの思想になるはずである。