お前の名前
やれやれ、変にうるさいのがいたせいで一睡もできなかったよ。にしてもなんだよ俺の席。周りやばい奴しかいないじゃん。聞き間違いじゃなきゃ近くの席から「セックス!」だの「ウータン!」だのヤバめなワード聞こえてくるし、よく分からんスポーツの話してる奴いるし、とにかく叫びまくってるのしかいない。頼むから静かにしてくれ。寝てる奴がいるの考えてくれよ、一部聞くに堪えねえし。
んで、今は先生が来て御託と綺麗事並べてやがるよ。何がみんなで仲良く支えあって最高のクラスになろうだ。何が君たちなら何にだってなれるだ。知ったような口ききやがって。小学生じゃねえんだよ。もう高校生なんだよ。そうやっていい人風に振舞ってもいつかボロ出すに決まってる。どうせ俺が何されようが助けてなんかくれねえ。話すだけ話してもそれっきり。みてても「ふざけあい」だ「じゃれあい」だと相手にしない。大人ってそういうやつらなんだろ?しまいにゃ「お前が人とまともに接しないから」なんてこっちのせいにしてきやがる。なんなんだよ、こっちの気持ちも考えないでふざけたことばっか言いやがって。
・・・まあ、それについては正しいのかもしれないけど。
あーもう、何でこんな面倒なことばっか考えちまうんだよ。辛くなるだけなのに。つか、今は何の話してんだっけ・・・って最悪じゃん。生徒の名前呼ぶ時間かよ。式の時の呼名だけにしてくれ。何か次俺だし。
「えーっと次は、藤松、き・・・輝星君」
あーもう来た来た
「・・・はい」
あーあー、案の定笑い声するよ。もういいや、慣れてるし。にしても今日はいつもより少ないな。ま、学年全員じゃこうはいかねえだろ。つかあと一回名前呼ばれんのか。もう勘弁してくれよ。早く帰りたい。
「じゃあ最後、宵月芹香さん」
「はい!」
元気いいなあ、さっきの奴か。しかし、どうも引っかかる声だな。
この時は知るわけねえよな、これが始まりなんて。