なんだお前
ここが俺の教室か。えっと席は、廊下側二列目の真ん中あたりだな。どうせなら窓側がよかったな。外見てりゃどうにかなるし。まあ席がどうかなんて関係ない。どうせここも地獄になるんだ、この名前聞いて笑わねえ奴いねえだろ、それに名前以外にも笑われるとこばっかりだ。よかったな、好きなだけ笑い飛ばせる奴が同じクラスにいて。ま、どうせ三年ありゃ終わるんだ。地獄にはもう慣れてる。先生来るまで寝たふりでもするか。
「俺、いったい何のために生きてんだろーな」
昔っから人に笑われてばっか。いつしか人はみんな俺を笑ってんだ、世の中皆俺が嫌いなんだ、そう思うようになって人を遠ざけ始めた。中学の時、もしかしたら俺にやさしく接してきた人がいたのかもしれない。でもそうだとしたら、俺はそれを拒んで、嫌われて、一人になっていったんだと思う。
人に嫌われるのも、笑われるの、馬鹿にされるのも慣れてるつもりだし、辛いとは思わなくなってきた。でも、人を信じられない。家族も他人も、自分だって信じることができない。信じるのが怖い。信じた人に裏切られるにはもっと怖い。
結局傷つきたくないだけかよ。そんなんだから友達一人できないんだよ。
ああもう、変なこと考えんな、寝れねえだろ。まあ周りがうるさいのもあるか。入学初日だもんなあ。スマホでもいじろっと。
「ねえねえ」
「ねえってば」
ん?俺か?女の子が話しかけてくるなんて珍しいな。にしても、かなりちっこい奴だな。
「何?」
「僕、君の隣の席なんだ、よろしく!」
はあ、それだけ?なんだお前。ったく、こういう空気苦手だからボーとしてたいのに。対して用もないなら話しかけてくんなよ。「ハイハイ、よろしくお願いします。」
「むー、なーんか感じ悪いにゃあ」
分かったらどっか行けよ。
しかし、今思うとあれだな。
出会いって、こんな何気ないんだな。