俺の名前
突然だけど、俺の名前なんて読むと思う?
漢字はこう書くんだ。
輝く星で「輝星」
普通なら素直に「こうせい」だろうな。だけど俺はこの漢字で「きらぼし」って読むんだ。まあおかしいわな。名付けてくれた親父としては、「星のようにキラキラ輝くかっこいい男になって欲しい」だそうだ。
はあ?
ふざけるのも大概にしてほしい。人の名前で遊びやがって。この時代、確かに改名はしやすくなったが、この名前で大人になるまで生きていかなきゃいけないことには変わりないんだ。何が「キラキラ輝く星のようになれ」だ。生まれてこの方15年、一度だってそんな風に輝けたことなんてない。大体、そういう願いがあったとしてももっといい名前あっただろ。当て字にもほどがあんだろ。
親って選べないからつらいよな。よく「DQN親」とか「バカ親」ってネットで聞くけど、まさにそれに当てはまるであろう親を持つ俺としては「同じように悩んでる人がいるんだな」
なんて思ってしまうけど、「俺より悲惨な奴なんていてたまるか」なんて思ったりもする。
今日は高校の入学式だ。俺はこの名前のせいでこの15年間、一度たりとも友達ができたことがない。名前のせいでずっと馬鹿にされ続けてきた。あるいは俺は、途中から人に馬鹿にされるのを恐れて他人を遠ざけていたのかもしれないが。だが、俺にとってこれまでの人生が地獄であったことには変わりない。この日々がいつまで続くのか。それとも俺は、これ以降この地獄を無の心で受け入れてしまうのだろうか。
しかし、あそこにはいっぱい人がいるな。さっきからざっと8人ぐらい、ずっと門のそばでわいわいはしゃいで写真撮っている。中学の仲良しグループが全員一緒に入学したのだろうか。ああいう人達はいいよな。陰キャ陽キャってのに関してはよくわからんが、リア充ってのはああいう人なのだろうか。楽しそうで何よりじゃないですか。特に中央の男女二人、ひょっとして付き合ってんのかね。
悔しい。幸せアピールしやがって。
何考えてんだ俺は。珍しく人に興味持ちやがって。羨ましいのか?それともあの輪の中に入りたいのか?やめとけ、入れる訳無いだろ。それより、呼名で呼ばれた後の自分の心配しろ。
ああ、また嫌なこと思い出しそうだよ。