033
使い魔軍団の対決はクリスの優勢だった。
一体、また一体と、クリスの使い魔が敵を倒していく。
「信じられん……これでも敵わぬというのか」
驚愕するビクトル。
一方、クリスたちも驚いていた。
「あいつら次々に倒れていくけど生きてんのか?」
魔女隊の隊員がバタバタと倒れているのだ。
使い魔がやられて魔力が底を突くと、術者の女も命を落とす。
それがチートの代償だった。
「クリス、君も使い魔がやられたら倒れるのか?」とレイ。
「分からないわ。でも、あんな風にはならないはず。あの人たち、明らかに前より強いし、たぶん何かしたんだと思う」
「魔力を後天的に上げたとでもいうのか?」
「おそらく」
「そんなことがありえるのか。いや、あの女たちは様子がおかしい。倒れていない者も正気を保っているとは思えん。特殊な薬を使っている可能性はあるな」
使い魔対決の形勢が傾いていく。
「魔女隊が力負けすることは想定外だったが……まぁいい。全軍、突撃しろ! 魔女隊に加勢しろ! これ以上は死なせるな!」
今の魔女隊は負けたらおしまいだ。
寝たら魔力が回復する……とはいかない。
だから、ビクトルは魔女隊のカバーに入る。
「行くぞ! 我に続けー!」
武官長が先頭に立って突っ込む。
ドーアの軍勢がクリスの使い魔へ斬りかかった。
魔女隊の使い魔からは可能な限り距離をとっている。
近づくと巻き込まれそう、と誰もが思っていた。
「ドーアの兵士が突っ込んできたぞ! 皆、何が何でもクリスを守れ! 絶対に突破させるな!」
ヒューゴラスが防御を固めるよう命令する。
シャロンの戦士たちは各々の武器を構え、緊張感を高めた。
「形勢は……互角、いや、我が軍がやや不利か」
ビクトルは専属の近衛隊と共に離れたところで戦いを眺める。
そうすることによって、的確に状況を判断していた。
「どうにか武官長がクリスを刺せればいいが……シャドウが邪魔だな」
クリスの足下には影のプールができている。
複数のシャドウが警備の目を光らせているのだ。
仮にシャロンの戦士を突破してもシャドウが立ち阻む。
普通に迫ってクリスに刃が届くことはないだろう。
「仕方ない、リスクを覚悟で奇策に転じるか」
ビクトルは近衛隊に作戦を伝えた。
「例の作戦を決行する。おそらくこの内に何人か、下手すれば全員が死ぬ。だが、上手くいけばクリスを殺せるだろう。やれるか?」
「お任せ下さい、陛下」
「陛下のほうこそ無理はなさらずに」
「我々が成功させた場合は速やかにお下がりください」
「うむ」
ビクトルは剣を構え、前方を睨みながら吠えた。
「行くぞ! お前たち!」
ビクトルと近衛隊が動いた。
一直線に突っ込み、距離を詰めていく。
「陛下、この距離なら」
「そろそろ使い魔の攻撃に巻き込まれかねません」
近衛兵たちが警告する。
ビクトルはすかさず「まだだ!」と返した。
「男の俺たちにはまだ遠すぎる」
ビクトルたちの距離がぐんぐん縮まる。
魔女隊の召喚した使い魔軍団のすぐ後ろについた。
「今だ!」
ビクトルが合図を出す。
その瞬間、近衛隊の隊員たちが装着している右手の指輪が光った。
それは――魔具〈転移の指輪〉だ。
魔具は魔力量に比例して効果を高める。
そして男の魔力は総じて非常に低い。
それでも魔力がないわけではない。
つまり、魔具を使うこと自体はできるのだ。
「なっ……!?」
「ドーアの兵が!?」
「いったい、どこから!?」
一瞬にしてクリスの周囲を近衛隊が囲んだ。
突然の登場に驚くシャロンの戦士たち。
「よし! クリス様を殺すぞ!」
「クリス様、お覚悟を!」
全方向から近衛隊の兵が突っ込む。
全員が剣先をクリスに向けていた。
「やらせはしない」
クリスの足下から数体のシャドウが現れる。
シャドウはクリスを囲み、迫り来る近衛隊を迎え撃つ。
「ぐぁあああああああ」
「陛下ぁああああああ」
返り討ちに遭う近衛隊。
クリスのシャドウは人間の敵う相手ではなかった。
「ありがとう!」
「これが我々の役目ですので」
シャドウが再び影に潜んだ。
それと全く同じタイミングで新たな転移者が現れた。
「クリス、お前は俺が殺す!」
ビクトルだ。
シャドウが影に潜むタイミングを狙っていた。
その瞬間であれば、攻撃を妨げる者はいない。
ビクトルの剣がクリスに向かって振り下ろされた。
お読みくださりありがとうございます。
評価・ブックマーク等の応援、いつも励みになっております。
よろしければお気に入りユーザ登録も是非……!




