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「オラァアアアアアアアアア!」


 ダッドリーが大斧を振り回して魔物を蹴散らしていく。

 そんな彼の死角を突こうとする敵はアルテが排除する。

 完璧な連携だ。


「やっぱ30を超えると身体能力の低下を感じるな!」


「31歳ならまだ大丈夫でしょう」


「お前も31になれば分かるさ。そういえば、アルテっていま何歳だ?」


「28ですよ。我々の年の差は3だといつも言っているでしょう」


「もしかしたら差が広がるかもしれねぇだろ!」


「そんなわけないでしょう。同じ時間を歩んでいるのですから」


 ダッドリーとアルテの戦いは順調だ。

 しかし、他所に目を向けると安堵することはできなかった。


「プラチナ組が苦戦しているな」


「ゴールド組とシルバー組は余裕そうですね」


 強敵の相手はプラチナランクのハンターが引き受けている。

 しかし、数の差もあって旗色はよろしくなかった。


「ギルドの指示に逆らうことになるが、プラチナ組の加勢にいくか?」


「そのほうがよさそうですね」


 ダッドリーとアルテが移動を開始する。


「おい、俺達はプラチナ組の加勢に行く! ここは任せたぞ!」


「おいおい、報酬がいい方にシフトしようってのか!?」


 近くで戦っているハンターの一人が笑いながら言う。


「ならお前さんのチームで行ってきてくれねぇか?」


「冗談だよ、冗談。ここは俺達に任せな!」


「おう、頼んだぜ」


 ダッドリーとアルテの実力はプラチナに相当する。

 それでもゴールドなのは、彼らの活動方針が関係していた。

 彼らはこの町――キーアの近くに出没する敵しか狩らないのだ。

 彼らの狩場にプラチナクラスの敵が現れることは滅多にない。

 それ故のゴールドランクである。


「今回はプラチナ級の敵が多いな」


「それだけ聖女の容態がよろしくないのでしょう」


 プラチナハンターの集まる草原で、ダッドリーは苦笑いを浮かべた。

 目の前には単体ですら手強い敵がうじゃうじゃと蠢いている。

 町でも屈指の名高いハンターたちが軒並み苦戦を強いられていた。


「クリスの前で見栄を張った以上、絶対に無事で帰るぞ」


「もちろんです」


 前方に広がる強敵の群れに向かって、ダッドリーたちは突っ込んだ。


 ◇


 シャドウはリアルタイムで同族と情報を共有することが可能だ。

 その特性を活かす為、クリスは二体のシャドウを召喚していた。

 一体は自分に同行させ、もう一体はダッドリーたちを監視させている。


「戦況はよろしくありません」


 クリスは路地裏でシャドウの報告を受けていた。


「よろしくない!?」


「私の見立てでは、おそらく……」


「おそらくなに!? はっきり言って!」


「このままだとお二方は戦死されるかと」


「そんな……!」


「今、ダッドリー様が負傷されました」


「ダメ! 助けてちょうだい!」


「それはやめておいたほうがいいかと……」


「なんでよ」


「使い魔も魔物です。急に現れても驚かせることになるかと」


「たしかにそれもそうね……」


「それに、この距離からは加勢することができません」


 シャドウは距離制限のことを言っている。

 魔具の仕様上、シャドウの行動範囲は制限されていた。

 ダッドリーたちの戦場は範囲外にあるのだ。


「ぐぐぐっ……」


 舌打ちするクリス。

 その時、大通りから悲鳴に似た声が聞こえてきた。

 プラチナハンターの誰それがやられた、というものだ。

 その声がクリスを突き動かした。


「もう我慢できない!」


 突如として走り出すクリス。


「クリス様!? どちらへ!?」


「決まっているじゃない! 私も戦場にでるのよ!」


 クリスは自分につけているシャドウの召喚を解く。

 そして、転移の指輪を発動した。


 ◇


「アルテ、ゴールドとシルバーからの救援はどうなってる!?」


 ダッドリーは死に物狂いで敵の攻撃を防いでいた。

 もはやこちらから仕掛けようという気はない。

 反撃する余裕などどこにもない。防戦一方だ。


「もうしばらくかかりますね」


 アルテもダッドリーを守るように戦っていた。

 攻めるのではなく、守る為の矢を放ち続ける。

 どちらかが少しでも気を抜くと壊滅する状況だ。


「おいおい、このままだとプラチナ組が全滅するぞ」


 ダッドリーが左腕で額の汗を拭う。

 それによって額に血がこびりついた。

 彼はこの戦闘で左腕を負傷していたのだ。


「ぎゃあああああああああ」


 近くから悲鳴が聞こえる。

 またしてもプラチナランクのハンターがやられたのだ。

 既にプラチナハンターの2割近くが命を落としている。

 形勢が魔物側に傾いていることは誰の目にも明らかだった。


「すまねぇクリス、お前のところへ戻れそうにねぇわ」


 ダッドリーが覚悟を決める。

 しかし、その時――。


「戻る必要はありませんよ、ダッドリーさん!」


 どこからともなくクリスが現れた。


「「クリス!?」」


 ダッドリーとアルテが同時に驚く。


「助けに来ました! クリス、参上です!」


「馬鹿野郎! 何しに来やがったんだお前ぇ!」


 ダッドリーが顔を真っ赤にして怒鳴った。

 首筋に血管を浮かばせ、地面が揺れるほどの声を出す。

 これには他のハンターのみならず魔物まで一瞬怯んだ。


「早く帰りなさい!」


 アルテも苛立ち気味の声で言った。


「帰りません! 私も戦います!」


 クリスは首を横に振る。


「お前みたいなポンコツじゃ足手まといにしか……」


「私はポンコツなんかじゃない!」


 今度はクリスが怒鳴った。

 彼女はダッドリーと交戦中の魔物を睨みながら右手を掲げる。

 召喚の指輪がピカッと光り、そして――。


「なんだ……!? これは……!?」


 大量の使い魔が現れた。

 ダッドリーたちが戦っている魔物よりも遥かに強い猛者ばかりだ。

 しかもその数、なんと1万体。


「召喚の指輪で呼べる魔物の質などたかが知れているはず。それに召喚できる数はせいぜい数体が関の山。この数にこの質……クリス、あなたは、やはり」


 アルテの言葉にクリスは頷き、凜とした表情で言った。


「ダッドリーさんにアルテさん、それに他の皆さんも撤退してください――ここは私が引き受けます」


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