第50話 エンディング
ブルースが、ハッチからのぞきこんだ。
「感動の再会に水を差してすまないが、そろそろ出てきたらどうだ」
あたしは頷くと、カプセルを消した。
床がなくなり、どさっと地面に落ちる三人。
「凄いね! 手品師クラブでもスターになれるんじゃない」
と二人がほほ笑む。
「いや、もうこれ以上忙しいのは勘弁です!」
あたしは涙を拭いながら答えた。そして、思いだした。
「そうだ、これで終わりじゃなかった!」
まったくもって、時間がない。アリスのウサギの気分だよ。元老院の人たちにも合わなくちゃ。ああ、もう、のんびりしたい!
その時、リムジンが走ってきた。あたしたちの傍に車を止め、白装束の男が降りてきた。
「コトコ様、元老院の方々がお待ちです」
なっ、なんちゅうタイミング。
「ちょっと待ってください、あたしだけ出向いてもだめなんじゃ?」
そして、ブルースをみる。
「そうだな、機械の国の代表にも来てもらわないとな」
「あと、人間の誰かに立ち会ってもらおう。エドナ会長がいいかも知れん」
「少々お待ちください。指示を仰ぎますので」
そういうと、白装束の男はリムジンに乗り込んだ。
しばらくすると車から降りてきて言った。
「では関係者の方を召喚してください。そろったら、元老院の館へ参りましょう」
「わかりました!」
白装束の男に答えてから、周囲に目をやった。今回の関係者があたしの動向を見守ってる。
あたしが一声かけないと解散できない御様子だ。何で、こんなことに……。とりあえずブルースに観測者への連絡をお願いする。
それでは解散を促していこう。まずはオニール家からかな。
「オニール大佐。良かったですね、娘が元気に戻ってきて」
立場上そういいつつも冷や汗が流れる。マックで鍛えた笑顔が引きつる。だって、娘の体を好き放題に使ってたのだから……。
気まずい空気が流れる……。その静寂を打ち破ってヒナちゃんが飛びついてきた。
「コトコ、お姉様!」
「え? お姉様?」
ヒナちゃんを抱きとめながら周囲を見回す。
「お姉様って? あたし?」
あたしは自分を指差した。うなずくヒナちゃん。
「コトコお姉様のおかげです! お姉様がいなければあたしの覚醒もなかったし、お父さんを止めることもできませんでした」
ヒナちゃん、なんて良い子、賢い子。
「俺からも礼を言わせてくれ。君がいなければ、相当な被害がでただろう。ありがとう」
「いえいえ」
そんなに感謝されると、逆に気まずいよ。
「とりあえず、ヒナちゃんの体も心配なので帰るなり、休むなりしてください」
ここ、お開きにしていきます。
そして、あたしたちをポカンとみている副官さんには。
「二人をよろしくお願いします」と耳元でささやきその場を離れた。
次はどこかな? マリアちゃんに近づくあたし。そして、パン! と手をたたいてから言った。
「えっと、今日はもうお開きです」キョトンとした表情で、あたしを見つめる。
「えっ! まだ、何か起こりそうでワクワクしてるんだけど」
「マリアちゃん、今日はもう何も起こってほしくありません!」
「さあ、帰ってください。ブンブン丸で帰ってください!」両手でグイグイ体を押す。
「酷いよー、追い返すなよー!」ズルリズルリと押されながら答える。
「ほら、落ち着いたらお茶会するから。細かいことはそのとき話すから。クリスティちゃんも今日は疲れてるはず。だから、しっかりおうちへ送り届けてください!」
「わかったよぅ、クリスティ帰るぞ!」
クリスティちゃんはブルースの近くで、お祖父様と携帯端末で話していた。呼び声に気が付くと、パタパタとあたしに駆け寄り抱きついた。そして、マリアちゃんと一緒にブンブン丸で帰っていった。
さてと、「ブルース、観測者はいつ頃くるの?」
「1時間程度で到着するだろう。エドナ会長とは元老院の館で落ち合うことになった。クリスティの事で、予定がすべてキャンセルになっているのでちょうどよかった」
あたしは白装束の方へ向かって言った。
「では案内お願いします」
あたしは再び元老院の方々の前にいた。あたしの一歩後ろには観測者、ブルース、ジャックが控えていた。
「おぉ、コトコちゃん、えらいことになっとったなぁ。わしらの予想の斜め上の事態になっておって驚いたわい!」
「で、和平の話なんですけど」とあたし。
「コトコちゃんはせっかちじゃなぁ」
いや、もう、クタクタなんですよ。早く帰ってお風呂に入ってのんびりしたいんですよ! と心の中で叫んでいた。
「前回ちらっと話したように、レッドレアクリスタルの採掘権を融通してくれれば、キミたちの要望を認めよう」
「あたしたちの要望は人工知能(AI)を1つの種族として認める。人工知能(AI)の人権の保護。この条件で署名をお願いします」
エドナ会長が誓約書を白装束の男に渡す。するとエレベーターの様なものに乗り、元老院の席まで空中を移動した。そして、誓約書を一人に手渡した。彼は内容を確認すると、筆を取り記入した。それを、白装束の男に渡す。再びエレベーターで移動し会長に手渡した。
会長が誓約書に目を走らせ、元老院からのサインを確認する。次に観測者にサインを促す。また、誓約書を注意深く確認すると。両手で誓約書を掲げた。
「ここに盟約は結ばれた!」
おおーっと、騒めきがおこった。
「やったなコトコ!」あたしたちは抱き合った。
「いやー、思ったより早く解決してよかった。格闘技をやったり、アイドルをやったり、いつまでやるのかと思ったよ」
「コトコ、ぼやいてばっかりいたもんね」
キターー! 茶々丸カットイン。
「あっ! ジャックには後で文句があるからね!」
黒い笑みを浮かべた。
「えっ! なんだよ、コトコ」
「トボケないでください。人間の体を勝手に使った、こ・と・で・す」
「だって、本当に心がないって思ったんだもん。しかたがないじゃないか!」
黒い笑みを浮かべたまま、ジャックに近づくあたし。
「状態維持に努めたんだよ。いつか、突破口が見つかることを願ってね」
ジャックは身振り手振りを駆使して言い訳を並び立てる。
「でも、結果的には良かったじゃないか。それで解決したところもあるでしょ」
「うん、まあ、確かに」
なんか、うまく言い包められた気がするなぁ。
その時、パンパカパーンと音楽が鳴った。突然のファンファーレにキョロキョロするあたし。
「これから、勲章の授与を行います」
何処からともなくスピーカーの音声が流れた。
「今回の活躍をたたえ、コトコ・ペンデルトンに名誉勲章を授与します!」
「はい?」こてんと頭を傾ける。
「コトコ・ペンデルトン前へ」
急な出来事に訳もわからず、指定された場所まで移動する。
落ち着きなくキョロキョロと周囲を見るあたし。
エドナ会長があたしの胸に勲章を付けてくれた。
照明に照らされ、勲章がキラリと輝いた。
「キミはアメリア連邦共和国を危機から救ってくれた英雄だ!」
なんでこうなった? あたしはこってっと頭を傾けた。




