第49話 異形? それとも女神?
ギュウゥゥゥーーーーん! あたしは60メートル級の巨人になった。ズズーーンっとあたしの重さでアメリア連邦国防省の地面が足型に陥没した。
巨人になる途中、マリアちゃん、クリスティちゃんと、目があった。凄い驚いた顔だった。十分異形だと思うけど、後々異形の者とか言われる可能性を少しでも下げる為に、最善を尽くした。取り敢えずエフェクトでキラキラにして、翼と天使の輪は必須アイテムでしょ。これで、後々異業の確率を下げれたはず。たっ、多分。運が良ければ天使様、女神様、と呼ばれるかも知れない。皆がいる方を見て、あたしは言った。
「ちょっと行ってきます!」
するとマリアちゃんが、両腕を大きく振って何やら叫んでいる。あたしはマリアちゃんの方に顔を近づけた。
「マリアちゃん何?」
「コトコ、パンツ見えてるよ!」
パアアアーっと顔が真っ赤になった。そして、スカートの裾を抑えた。
「しまったー、今のイメージのまま拡大しちゃったからなー」
「コトコ、服装を変えればいいじゃないか」ブルースがあたしに通信で語り掛けてきた。
「もー、時間がない! 今はそこに計算を回している余裕がないよ!」
「コトコちゃん、あんまりこっちを覗き込むと、今度はム、胸の方が見えちゃうよ!」
滅多に叫ばないクリスティちゃんが叫んだ。
「もういい、今日は大サービスじゃー!」
涙を流しながら飛んでいくあたし。
「あたしも同じ体なのにいー!」
顔を真っ赤にして蹲るヒナちゃん。
あたしは一気に衛星軌道上へ駆け上がると、墜落してくる衛星兵器を視認した。わー、随分赤くなって熱を持ってるよ。このまま掴んだらやけどするなぁ。対策として、あたしは氷のミトンを手に出現させた。
「これで大丈夫かな?」両手を目視で確認し、衛星兵器を掴む。ジュジュ――っと、ミトンから水蒸気が湧きでた。「ゲホゴホ」凄い水蒸気だ。溶けていくミトンを高速で再生する。
その時だった。あたしの頭に大きな衝撃がきた。その衝撃と共に転生してからこれまでの事が次々と、脳裏に浮かんでは消えた……。そして、意識が途切れてしまった……。
「あれ? ここは何処だ?」
白い、白い、空間にあたしはいた。よく、周囲を見渡すと円形のお盆の様な場所の上にいるのが分かった。お盆の周囲は空だった。白い物は雲だった。時折、雲の中に入り込み靄がかかる。なんかココ覚えがあるなぁ。
久しぶりだね、コトコちゃん、転生は上手くいったみたいだね。後ろから急に声がかかり、「ひゃ!」と驚いた。振り向くと、髭を蓄えたサンタさんの様な人物が右手を上げていた。
「ひょっとして、神様?」
「うん、まあ、そんなもんかな。すっかり忘れちゃってるの? 転生について色々注文つけていったじゃないか」
「えっ? そうだったんですか? いやー、全く覚えていません」
「目的もすっかり忘れてるの?」
「目的って、なんですか?」
「…………」
「そっ、そうだった。目的の途中だったんだ!」
「いや、目的達成のためにわざわざ転生させたのじゃから、しっかりお願いするよ」
「えっ!?」
「これからが本番、しっかりお務めよろしく!」チョンと、押されてお盆の上から落とされる。
「ちょ、ちょっとー、のんびりしたいって要望は出して無かったんですかーーーー!」
あたしを見下ろす神様が見えた。
「はっ!」と我に返った。
あたしは衛星兵器を掴んだ状態で宇宙空間を漂っていた。まだ、ミトンからはじゅうじゅう煙が出ている。しかし、熱は随分冷めていた。
「危ない、ちょっと意識飛んでたかも。今回はシャットダウンではなかったんだ。よ、よかった。なんだったんだよ、さっきの衝撃は?」周囲を見回すと、ヒュンヒュン飛び交う破片たち。
「スペースデブリ、ちゃんと掃除しとけー!」
あたしは衛星を体に引き寄せ、反動をつけ、遠くに見える銀河に向けて押し出した。
スススーっと、衛星が加速していく。
「宇宙っでやるとこうなるのか。映画で見るのと大体同じ状況だな」
この星から離れていく衛星兵器をみつめる。
「このままにしておくと何処かで問題になるかもしれないなー。破壊しとくか」
あたしは手を十字にクロスし、熱線を放射した。
「ビイイイイーーーーム!」
外壁がドロドロに溶け、ドドーンという音とともに砕け散った。
「フフフ、楽勝! ジャックが言ってたように生身の体が無い方が、戦いには向いてるね」
「宇宙でも全く問題ないなあ。量子さえあれば何でも作り出せるもんね。あそこに、見えるのが月か、ちょっと行ってみるかな」 月の表面に三角座りですわり、地球を眺めた。
「あれ、地球じゃ無いかもしれないんだよね」
「…………」
「よくわからない世界に来てしまったなあ」
「…………」
「あんまりのんびりしてるとみんな心配するかなー」
「…………」
「さあ、ちょっと気が重いけど、帰るか」
ひょろひょろと、飛行しながら地上を目指した。
「アニメ・特撮ヒーローの気持ちが少しわかったかも……」
あたしは寂しさを含んだ笑顔でわらった。
「そうだ、もう大きく無くていいから、元の体の大きさに戻すか」
ギュウゥゥゥーーーーん! と体を小さくした。
「あと、スパッツを穿いておこう。さて、どのあたりからが大気圏突入なのかな? 映画やアニメで見た事しかないからなぁ」
あたしはポンっと手を打って、自分の周囲に大気圏突入のカプセルの様な物体を出現させた。しかも下部を透明にしておいた。
「わー、大気との摩擦で凄いことになってるよ!」
カプセルの周囲は炎に包まれていた。
「こんな景色は滅多に見られないぞ! 写メとっとこ」
ポシェットから携帯端末を取り出し撮影を開始! 景色を撮影したり、自撮りをしたりしていると、自由落下に入ったようだ。
「もうちょい大丈夫かな!」
あたしは撮影を続行。
「これって動画投稿すれば、再生回数凄いんじゃ! そろそろ、パラシュートが必要かな?」
あたしはカプセルがゆっくり落下するようにパラシュートを出現させた。ゆらり、ゆらりとアメリア連邦国防省に落下するカプセル。
「あっ!」みんながあたしの帰還を待ち構えてくれている。マリアちゃんとクリスティちゃんの顔が見えた。
二人の顔を見たら、急に涙が流れ出した。手で涙を抑えるが全く持って役にたたない。どさりと、カプセルが着地した。
あたしはカプセルの中で縮こまっていた。マリアちゃんとクリスティちゃんが、ハッチを開けて飛びついて来た。
「コトコ、遅いから心配したぞ!」
「コトコちゃんだー。よかった生きてるよー」
三人は抱き合って泣いた。




